研究課題/領域番号 |
19K01754
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岩壷 健太郎 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (90372466)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | FX証拠金取引 / 行動バイアス / クラスター分析 / ランダムフォレスト / 非認知スキル / 保有期間 / 収益率 |
研究実績の概要 |
令和2年度には、2つのプロジェクトに取り掛かった。一つはFX証拠金取引の投資家に対してアンケートを実施したことである。分析はまだ完了していないが、アンケートは前年度のアンケート調査では実施できなかった認知スキル、非認知スキル、専門知識、性格など包括的な質問を用意して、1000名以上の回答を得ることができた。このデータを使って、認知スキル(FX取引に関する専門知識、数学の知識)、非認知スキル(Big5と呼ばれる性格診断)、行動バイアス(危険回避度、時間割引率、自信過剰)のなかで、実際の投資パフォーマンスに影響するのは何かを分析する予定である。さらに、その要因がどのような投資行動(取引回数やDisposition効果など)に影響しているのかを明らかにする予定である。 令和2年度に行った2つ目のプロジェクトは、FX投資家の個人取引データ(2015年)から算出された建玉の保有期間、レバレッジ、勝率、リスクリワード比と月間収益率を使ってクラスター分析をした。その結果、スキャル投資家を中心としたクラスターが2つと、デイトレおよびスイング投資家を中心としたクラスター1つに分類され、前者は収益率が高く、レバレッジが低く、勝率が高いクラスターとその逆の収益率が低く、レバレッジが高く、勝率が低いクラスターに分類され、3つ目の保有期間が長いクラスターの特徴は前者2つのクラスターの中間に位置することが明らかになった。また、ランダムフォレストによって収益率の予測モデルを推計したところ、説明変数の重要度が高い順に勝率、リスクリワード比、レバレッジとなり、保有期間の重要性は非常に低いことが分かった。これらの結果は株式投資では長期投資が推奨されることが多いが、FX証拠金取引では長期投資と短期投資のどちらのパフォーマンスがいいかという議論は必ずしも重要ではないことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度に行った投資家アンケート調査では、アンケートに答えてもらうだけでなく、投資家に許可を得て取引データの提供を受けることができた。取引データとアンケート調査を組み合わせた研究は非常に珍しい。取引データの利用はアンケート調査による虚偽解答や社会的望ましさバイアスを回避することができる上、アンケート調査を組み合わせることにより投資家の意図や情報、行動バイアスなども分析対象となりえる。このようなアンケート調査が実施できたことに大変満足している。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は令和2年度に行ったアンケート調査と、同時に収集した取引データを組み合わせて、分析を行う。さらに、大規模な取引データ用いた研究では、当初予定していた気質効果とハウスマネー効果というリスクテイクに対して対照的な2つの心理バイアスの分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により海外では研究発表が中止になったり、オンラインになったりしたことによって海外出張費が来年度に回された。
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