令和3年度は、2つのプロジェクトに取り掛かった。1つはFX証拠金取引の投資家に対して実施したアンケートと彼らの取引データを組み合わせて、 認知スキル(FX取引に関する専門知識、数学の知識)、非認知スキル(Big5と呼ばれる性格診断)、行動バイアス(危険回避度、時間割引率、自信過剰)のうち、何が投資パフォーマンスに強く影響を与えているのかを検証した。投資パフォーマンスに与える直接的な影響としては、認知能力や非認知能力よりも自信過剰による投資パフォーマンス低下効果が大きい。自信過剰な投資家は取引回数が多くて、レバレッジが高い。ただし、投資パフォーマンスに影響するのは取引回数の多さではなく、高レバレッジによって収益性が悪化している。金融リテラシーやFX専門知識といった認知スキルが高い投資は相対的にレバレッジが低く、投資パフォーマンスが良いことも明らかになった。 2つ目は、過去のパフォーマンスとその後のリスクテイクの関係を検証するものである。「人は大損するとリスクを高めるのか、それとも低めるか?大儲けするとリスクを高めるのか、それとも低めるのか?」について、個人投資家の取引データを使って研究した。 Imas(2016)は実現損の後にリスク回避的になり、含み損の後にリスク愛好的になるという実験結果を示し、注目を集めている。本研究では、FX証拠金取引において、個人投資家のパフォーマンスがその後のリスクテイクにどのような影響を及ぼすのかを日次データを用いて検証した。日次のリターンが証拠金比でみて5%を越える大きな実現益や実現損に対してスイングトレーダー、デイトレーダー はともにリスク回避的になりオーバーナイトのレバレッジを低めるが、大きな含み益や含み損に対してはリスク愛好的になりレバレッジを高める傾向がみられた。
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