研究課題/領域番号 |
19K01758
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
吉田 靖 東京経済大学, 経営学部, 教授 (10383192)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 注文不均衡 / マーケットインパクト / 高頻度データ / 金融証券市場 / 流動性 |
研究実績の概要 |
2019年度については、まず、東京商品取引所における金先物を分析対象として、約定および気配の更新を用いた高頻度データにより、日中の注文不均衡がリターンに与える影響からマーケットインパクトを計測し、分析した。 分析にあたって、本研究では、最も流動性が高いと思われる期先物を1銘柄選択し、その銘柄期先物となっている期間を分析対象とし、分析に用いる期間は東京商品取引所における新システム導入後の最初の新甫である2017年10月限の発会日であった2016年10月27日から次の新甫発会日の前営業日であった2016年12月22日までとした。 日中のマーケットインパクトの変動を計測するため、時間帯として時刻により5分間隔で区切り、1日の取引時間は234区間である。5分間のリターンは前区間と当該区間のGatheral and Oomen(2010)によるマイクロ・プライスの対数差分を使用し、ザラバの最初の取引区間のリターンは欠測値とする。約定の分類については、最良売り気配で約定した場合を「買い成行注文」で約定したとみなし、最良買い気配で約定した場合を「売り成行注文」で約定したとみなす。各区間内の約定頻度を算出し、「買い成行注文」約定回数から「売り成行注文」約定回数を差し引いて注文不均衡を算出した。この注文不均衡がリターンに与える影響を回帰分析により計測する。計測に当たってはマーケットインパクトは1時間単位で変動するものとし、回帰係数に時刻によるダミー変数を組み合わせた。 その結果、朝方の寄り付きの時間帯、および12時から15時の時間帯のマーケットインパクトが他の時間帯よりも特に小さくなり、早朝の時間帯はマーケットインパクトが大きくなる傾向があることがわかった。 そのほかにも、同様な分析をそのほかのコモディティ、株式個別銘柄でも分析を行うための、データの作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では本研究では、本源的な価値が比較的明確である株価指数のETFを分析対象としていた。しかしながら、データベースの準備の遅れと処理に必要な時間が予定よりもかかったたため、金先物のマーケットインパクトを先行して計測した。同時にETFの分析に必要なデータを整備していることから全体的には影響は軽微である見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度の実績を踏まえ、株価指数のETFを分析対象の中心とし、①売買スプレッド、②気配値の変更頻度、③取引の成立件数、④気配値の注文板枚数(デプス)、⑤AmihudのILLIQ(取引金額当たりの株価変化の絶対値)、⑥Pastor・Stambaughの指標(1期前の取引状況が翌期に与える影響)、⑦Liuの指標(取引執行のスピード)、⑧Lesmond・Ogden・Trzcinkaの限界取引コスト等の算出を行い、流動性の計測モデルを作成する計画である。 次に、対象を拡大して、他の株式銘柄やコモディティ市場・為替市場に関する分析を行う。 大量の高頻度データを取り扱うことによる多大なデータ処理時間の影響が課題であるが、分析対象期間・銘柄を検証しつつ、研究目的による優先度を反映した選定も取り入れつつ、研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大の影響により学会出張が中止となったため。 今後とも学会はオンライン開催となる見込みが多いことによる減があり得るが、データベースの費用が予定より多くなることより、合計としては予定通り進捗する計画である。
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