研究課題/領域番号 |
19K01758
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
吉田 靖 東京経済大学, 経営学部, 教授 (10383192)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高頻度データ / 非同期時系列データ / 先行遅行関係分析 / 流動性指標 / 東日本大震災 / 株式デリバティブ / ETF |
研究実績の概要 |
大阪取引所に上場されている日経225先物、日経225mini、TOPIX先物のティックデータは、非同期かつ高頻度の取引データであり、これらに対して、先行遅行関係の推計を行った。特にこれまでの研究は、実証分析モデルの制約として、扱いやすい同期データを対象としてきたため、高頻度といえども1分間隔などのデータに集計して分析を実施してきている。しかし、近年では本来の取引データである非同期のまま行える分析手法が発展していることから、この分析手法を用いて、市場として重要な価格発見機能を評価した。その中で、日中セッションのミリ秒単位の非同期のマイクロ・プライスを対象としHoffmann, Rosenbaum, and Yoshida(2013) の手法を適用したところ、これらの金融商品の間には明確な先行遅行関係が観測されないという結果となった。さらに細かい時刻が利用可能なデータを用いれば、わずかな差を検出できる可能性は残されている。 ETFに関しても同様な分析を試みたが、特定の時間帯では極めて短い時間間隔での多数の取引が観測される一方で、取引時間全体としての平均的な時間間隔は必ずしも短くないため、現時点ではそのままでは十分な先行遅行関係を分析することは困難であることがわかっている。なお、ETFについては各種の流動性指標を計測し分析中である。 さらに東日本大震災の際のディスクロージャーと株式価値の変動分析に関しても、イベント・スタディーを中心とした分析を進め、論文としてまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、学部長として大学運営上の対策の検討をする必要と関連する会議が増加したこと、さらに役員をしていた複数の学会においても、大会などの実施の中止や延期の検討および実施する場合も、これまでになかったオンライン方式の検討などが必要になり、計画より研究に費やすことができた時間が減少したことによる。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災の際のディスクロージャーと株式価値の変動分析に関しては、学術雑誌にまもなく投稿予定である。 新しい分析として、 Kunitomo, Sato and Kurisu (2018) が開発した SIML(separating information maximum likelihood) 法により、非定常多次元時系列におけるトレンド・循環要素の状態推定を多数の銘柄の非定常な高頻度データに応用することを検討中である。この分析方法によれば、株式価値などの非定常なデータについても、時系列分析を行うことが可能となり、本研究の課題である流動性のマイクロストラクチャー分析に応用することにより、研究に資するものと期待している。これらの分析が可能であることが示されれば、ファイナンスの実証分析に大きく貢献できる。 ETFの流動性分析については、取引が短時間に集中していることの分析を進めた上で、これに適した指標を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、学部長として大学運営上の対策の検討をする必要と関連する会議が増加したこと、さらに役員をしていた複数の学会においても、大会などの実施の中止や延期の検討および実施する場合も、これまでになかったオンライン方式の検討などが必要になり、計画より研究に費やすことができた時間が減少したことによる。 また、国内外の学会での発表を予定していたが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響で出張ができなかったため、旅費の支出がなかったことによる。 出張の再開の見込みは現時点で立っていないが、当初の予定よりも海外のデータの購入の増加を検討し、国際的な研究として、検証を進められるようにする。
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