研究課題/領域番号 |
19K01758
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
吉田 靖 東京経済大学, 経営学部, 教授 (10383192)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高頻度データ / ETF市場 / 株価指数先物 / SIML法 / 市場流動性 / ボラティリティー / イベント・スタディー / 伝染効果 |
研究実績の概要 |
まず、大阪取引所の日経225minは取引単位が日経225先物の10分の1で、呼値の単位については日経225先物の10円に対し5円あることなどにより、日経225先物を上回る取引金額となっている。この中で、日経225先物、日経225mini、TOPIX先物間の価格変動の同期化は高まっているとみられ、先行遅行関係を計測した。データとしては2019年10月及び11月の2019年12月限月の日中セッションの取引を使用した。その結果、明確には先行遅行関係が観測されず、今回用いた観測時間間隔では同期性が高いという結果となった。さらに細かい時刻が利用可能なデータを用いれば、わずかな差を検出できる可能性は残されている。 次に、日本のETF市場は、TOPIXや日経平均株価という代表的な株価指数を参照している投資信託が複数あり、それらの間で流動性格差があり、呼値も異なるなど、マーケット・マイクロストラクチャーの実証分析の対象として適している。これらの銘柄のスプレッドを分析した結果、1.ほぼ1ティック、2.大半が1ティックでそれ以外も多少はある、3.立会時間中のスプレッドが算出できる時間は比較的長いが1ティックが最頻値ではなく分布が右に大きく偏っている銘柄、4.スプレッドが算出できる時間が半分以下という4類型に大別できることがわかった。 さらに、指数の高頻度でのボラティリティーをSIML(分離情報最尤推定)法により比較すると、すべての時間間隔で日経平均株価はTOPIXよりやや大きめの値であったが、ETFはTOPIX連動も日経平均連動も同程度の値で、共に対象の指数のボラティリティよりも大きいことがわかった。 最後に東日本大震災後の銀行株式のリターンの伝染効果を検証すると、無差別的な反応である純粋伝染効果よりも、共通要因の違いに基づく情報伝染効果の存在が示唆される結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度及び2021年度は経営学部学部長であったため、大学の新型コロナウイルス感染症対策本部会議の構成員として、対策の決定に通常の学部長の業務よりも予期しない多くの時間を割くことになった。 また、文部科学省等の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」のリテラシーレベル及び応用基礎レベルの教育プログラムの導入のための新組織において、委員長等を務めたことも、当初予期しなかったことで、プログラムの運営と申請への対応等のため時間を割くことになった。 以上の二つが主たる要因でやや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
1.日経225先物、日経225mini、TOPIX先物のさらに短い時間間隔のデータを用いて、より短時間の先行遅行関係を分析する。 2.ETF銘柄により流動性が異なる要因及び同じ銘柄であっても時間帯によりスプレッドが存在しなかったり、著しく異なったりする要因の分析を行う。 3.ETFのボラティリティは連動対象の株価指数とは異なる可能性が示唆されたので、この原因について分析する。 4.SIML法を等時間間隔ではない約定ベースあるいは注文ベースの高頻度データに適用し、高頻度データでのジャンプを考慮したベータ等の計測を行う。 5.米国株式市場の高頻度データを用いて、さらに実証研究を拡大する。 6.東日本大震災のような大災害発生時と通常期での高頻度データを用いて、価格形成や流動性にどのような差があるかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額はニューヨーク証券取引所のデータを購入するために既に支出済みである。購入は2021年度に行ったものの、外国送金の手続きに時間が掛かり、2022年4月の送金となった。
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