研究実績の概要 |
本研究の目的は、金融危機下における中央銀行によるLLRの役割を実証的に評価することである。特に、昭和恐慌期(1930-32年)における日銀による特別融通(緊急融資)の金融システムへの影響および実体経済への影響について分析を試みている。2021年度は、これまでの研究成果として「The Effects of Lender of Last Resort on Financial Intermediation during the Great Depression in Japan」というタイトルの論文にまとめ、国際学術誌『European Review of Economic History』へ投稿を行った。そこで改訂要求があり、その対応を主に行った。主要な改訂は、日本銀行の取引関係に関する内生性の問題の対処の一つとして、民間銀行と日本銀行本支店との距離を操作変数として用いていたが、Weak IV (Instrumental variable)に関するF検定の結果が,いつくかの定式化において強く棄却するものでなかったため、Andrew, Stock, and Sun (2019)に基づくWeak IV robust testを行い、信頼区間の推定を行った。 結果として、日本銀行の取引関係が金融仲介に与える効果の頑健性が確認できた。さらに、銀行の立地の集積による誤差項の相関がみられる可能性があるため、地域と年次のtwo-way clusteringに基づく頑健標準誤差を推計した。推計の結果、銀行の立地集積による地域間の誤差項の相関を様々な方法でコントロールしても、これまでの結果が頑健であることが示された。これら分析に加え、銀行パニック期における日銀取引先で預金吸収力が上昇した結果の歴史的な解釈に関する改訂を行い再投稿した結果、当該学術誌に受理された。
|