本研究では、中央銀行による最後の貸し手機能の評価を行うために、昭和恐慌期(1930-32年)を事例として取り上げ、実証的な分析を行った。当時の銀行システムでは、日本銀行と取引関係のある銀行が金融危機時に優先的に特別融通(緊急融資)を受けることができたことが知られており、どの銀行が日銀の取引先かを識別することが可能である。本研究の実証分析によって、日本銀行の特別融資が金融危機時において預金・貸出の減少を食い止め、休業確率を下げたことが明らかになった。この結果は、中央銀行の流動性供給が金融緊縮時において、民間金融機関の金融仲介活動を支える重要な役割を担ったことを示唆するものである。
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