研究課題/領域番号 |
19K01760
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
金 よん晋 法政大学, 経営学部, 教授 (80326008)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 不動産投資法人 / J-REIT / スポンサー / IPO / SEO |
研究実績の概要 |
日本の不動産投資法人(以下、投資法人)の制度的背景から、スポンサーの役割が極めて重大であることを認識しつつ、スポンサー関連情報の収集及び整理を行ってきた。また、不動産投資信託(REIT)市場のエクイティ・ファイナンスに関する既存研究において本研究の新奇性をどのように具体化出来るか、その方向性を探ってきた。本年度はこれをもとに、投資法人の新規投資口公開(IPO;Initial Public Offering)におけるスポンサーの役割に照準を合わせて日本のRIET(J-REIT)のIPOを巡る諸現象について分析を行った。 具体的に、2001年9月から2019年12月の間に投資法人が実施したIPOにおいて、メインスポンサーを特定すると共に、スポンサーの投資法人への追加出資(親引け)に注目した上で、スポンサーの追加出資行動が、投資法人のIPO時の過小値付けと、IPO後の投資法人のパフォーマンスにどのような影響を及ぼすかについて分析を行った。その結果、①過小値付けに関しては、スポンサーの追加出資が概ねシグナリング仮説を支持する役割を果たし、②投資法人と投資家間の情報の非対称性が緩和されるIPO後における企業価値に関しては、スポンサーの追加出資が投資法人のモラル・ハザード問題を軽減する役割を果たすことが示された。即ち、J-REIT市場におけるスポンサーは、追加出資というコミットメントを通じて、IPO時には投資法人の質の差別化を図る一方、IPO後には外部投資家との利害を一致させる、といった二重の役割を果たしていると解釈できる。この結果は一般事業会社のIPOでは考えにくい、J-REITならではの特徴と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の研究課題は「不動産投資法人のエクイティ及びデット・ファイナンス」である。 今年度は、投資法人のIPO分析を行ったが、次年度は、投資法人の公募投資口発行(SEO;Seasoned Equity offering)におけるスポンサーや制度的特性が担う役割についても分析を行う予定である。このことから投資法人のエクイティ・ファイナンスに関しては、計画通り研究が進んでいると評価できる。 しかしながら、エクイティ・ファイナンス研究でも投資法人の負債による資金調達行動がレバレッジなどの変数を経由して考慮されていると言えるものの、J-REITにおけるデット・ファイナンスに焦点を合わせた分析については更なる深掘りが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
投資法人のSEOにおけるスポンサー関連情報についてデータベースの構築を行ったあと、スポンサーの財務行動やJ-REIT市場の制度的特性が投資法人のSEOのパフォーマンスと、SEOのタイミングに及ぼす影響について分析を行う。投資法人のIPO時におけるスポンサー関連情報に比べ、投資法人のSEO時におけるスポンサー関連情報は、スポンサー変更などの経時的変化を伴うため、その量は遥かに多いので綿密な整理作業が要求される。具体的に、2001年以降J-REIT市場で実施されたSEOのサンプルに基づき、SEO発表日前後における市場の反応とその要因分析を分析する。次に、市場条件とスポンサー行動がSEOのタイミングに及ぼす影響について分析を行う。この研究についても、2021年度中に学会での発表を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は学会がオンラインで開催されたり、海外渡航が難しくなり、旅費の執行が出来なかったので次年度使用額が生じた。次年度も旅費の執行が難しい場合、研究遂行に必要なデータベースの購入などに充てたい。
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