研究実績の概要 |
2020年度は、以下の学会報告(1)と学術誌採択(2)(3)の実績を残すことができた。(1) Innovation, CSR Intensity, and Firm-specific Risk: Evidence from Japan(日本ファイナンス学会第28回大会報告)CSR情報は、企業固有リスクを直接に軽減するだけでなく、技術革新リスクへの負のmoderating効果をもつことを検出。(2) Corporate social responsibility intensity, management earnings forecast accuracy, and investor trust: Evidence from Japan, Corporate Social Responsibility and Environmental Management, 27(6),2020 Page 3047-3059。CSRの信頼シグナル機能に注目し、CSR 集約度の高い企業ほど企業開示の歪みが軽減されることを検出。(3) Impact of corporate social responsibility intensity on firm-specific risk and innovation: evidence from Japan, SOCIAL RESPONSIBILITY JOURNAL (Received 17 August 2020, Revised 11 December 2020, Accepted 19 January 2021)。学会討論者・参加者及び学術誌審査員のコメントを受けて大幅に加筆修正し、採択された。2021年5月現在、公開を待っている。
|
今後の研究の推進方策 |
企業の技術革新能力は長期競争力の基盤であり、組織の技術革新力の中核は内部ステークホルダーである従業員の能力と意欲である。2021年度は、ステークホルダー理論に基づき、対内部ステークホルダー(employees)と外部ステークホルダー (non-employees)に分けて、ステークホルダー関係の構築が技術革新と企業価値に与える影響に注目する。具体的には、次の2つの研究を進める。 第一に、従業員の非金銭的報酬とCSRの関連に注目し、日本企業の従業員対策と雇用制度が従業員のモティベーションに与える影響と外部ステークホルダーの反応が、組織の技術革新力と企業価値に与える影響を分析する。この研究は、Employee-Oriented CSR, Innovation, and Firm Valueとして、2021年6月6日日本ファイナンス学会およびGCGI Lisbon 2021 Virtual Conferenceで報告予定である。学会報告を経て、分析枠組みと実証方法の改善に努める。 第二に、日本企業の従業員対策と雇用制度の特徴を踏まえて、従業員の機会均等(diversity)と労働環境(work-life Balance)に焦点を当て、CSRが従業員行動を通じて組織の効率性と技術革新力に与える影響へと分析を深める。従業員の機会均等や労働環境改善への内外の要求の高まりとグローバル技術開発競争のもとで、日本企業が直面する課題に新たな視点を与えると考える。 従業員の機会均等とワークライフバランスの改善が組織の生産性と革新力にどのような影響を与えるかについて、すでに理論的枠組みの構築に取り組み、employee-oriented CSR指標の作成および検証モデルの構築について予備的作業を進めている。
|