研究課題/領域番号 |
19K01765
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
播磨谷 浩三 立命館大学, 経営学部, 教授 (90347732)
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研究分担者 |
森 祐司 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00526428)
尾崎 泰文 釧路公立大学, 経済学部, 教授 (10359896)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域金融 / 地域経済 |
研究実績の概要 |
地域銀行の証券子会社設立の効果について、子会社の有無によって銀行本体の費用構造にどのような影響を与えるのかについて、費用関数の推定結果から計測された各種の経済性の指標(効率性、規模の経済性、範囲の経済性)を証券子会社の設立形態別に比較することで検証を行った。分析結果については、日本ファイナンス学会第28回大会(2020年6月13日~14日にオンライン開催)で報告した。また、家計のリスク性の高い金融商品への投資選好の地域間格差について、アンケートベースのデータに基づいて検証を行い、分析結果を日本金融学会西日本部会(2020年12月6日にオンライン開催)で報告した。なお、証券業における地銀系証券子会社の効率性の検証については、分析に必要なデータベースこそ完成したものの、効率性の決定要因に関する変数の選定に時間を要しており、プレ推定の段階に留まっている。他方、主たる検証課題について分析を進める過程で、地域金融機関のビジネスモデルの問題について顧客満足度の視点が軽視できないとの見解が共同研究者間で得られたことから、関連データを整備することとした。地域銀行と信用金庫との違いについても追加で検証すべきとの合意が得られたことから、関連するデータベースの整備を始めることした。その他、代替的な集中度の指標を用いて、信用金庫の業種別貸出構成や収益構成がパフォーマンスに与える影響について検証した成果論文が、改訂を経て、International Review of Economics and Financeに公刊された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
地域銀行の証券ビジネスの取り組みがどのような効果をもたらしているのかを検証することを目的とした課題については、予定していた学会報告も行い、概ね計画通りの成果が得られている。他方、地銀系証券子会社のプレゼンスの検証を目的とした課題については、最低限のデータベース作成については計画通りに対応できたものの、現時点ではプレ推定の段階に留まっている。分析対象となる地銀系証券子会社の数そのものが多くないため、設立形態別に比較を行うことが容易でないことに加え、詳細な財務データが入手できない先が多いため、パフォーマンスの背景などの追加検証が困難であることが大きな理由である。独立系銀行と金融持株会社傘下銀行との違いなど、設立母体をベースとした分析に拡張する方向で対応を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
地域銀行の証券子会社設立による効果の検証については、独立銀行と金融持株会社傘下銀行との違いについて焦点を当てた分析を追加で行い、成果論文を早い段階で完成させ、2021年度の前半には投稿する予定である。地銀系証券子会社のプレゼンスの検証については、共同研究者間でもう少し調整を行い、なるべく早く成果をまとめる方向性を決めたい。地域銀行のビジネスモデルと地域経済との因果関係に関わる検証課題については、顧客満足度の視点から新たに検証を行うことを2020年度中に決めたため、2021年度の前半には必要なデータベースの整備と検証方法について固め、分析作業に着手したい。地域銀行の証券業務に関する隣接した研究課題が既に進んでいることもあり、可能な限り、2021年度の後半には草稿段階で成果をまとめたい。その他、校務負担の無い時期のいずれかに、これらの研究成果の中間報告を兼ねた研究会を、関連した他の研究者も交えて開催することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に続き、予定していた研究会の開催と共同研究者との打ち合わせが、新型コロナウィルス感染拡大による所属大学の自粛要請で中止となり、旅費の執行が取りやめとなった。また、予定していた統計資料の購入についても、研究経過の進捗状況を勘案して、2021年度に延期することとした。なお、共同研究者とのオンラインによる数回の打ち合わせを経て、当初の研究計画に新しい検証課題を加えることが決まり、その分析に必要なデータベースを2021年度の早々に購入することが既に決まっている。
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