研究課題/領域番号 |
19K01766
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
大森 孝造 大阪経済大学, 経営学部, 准教授 (80779348)
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研究分担者 |
北村 智紀 東北学院大学, 経営学部, 教授 (80538041)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 投資信託 / 投資家行動 / パフォーマンス評価 / 資金フロー |
研究実績の概要 |
本研究は,「投資家がどのように投資信託の過去のパフォーマンスを評価するのか」について従来よりも詳細な分析を行うものである.2019年度は,本邦の株式アクティブ投信約800本を対象に,パフォーマンスと資金フローの関係を調べた. まず,投資家行動として,過去のパフォーマンスを評価して優れたものに資金を充てているかの確認が必要である.パフォーマンス評価の際には,市場要因によるリターンとマネージャー独自のスキルによるアルファを区別できているかを知りたい.そのために,CAPMなど標準的なリターン評価モデル5種を用いて個別ファンドの実績を分解し,フローとの関連を分析した.また,評価は,市場センチメントや販売チャネルの影響も受けると考えられるため,これらを考慮した分析も行った. その結果,超過リターンとフローの関係は正であった.本邦に関しては否定的な先行研究もあるが,株式アクティブファンドについては投資家が優れたパフォーマンスを評価しているといえる.リターン評価モデルの結果からは,投資家が市場要因を考慮したアルファを評価していることが示唆された.米国の先行研究では,市場全体の要因以外は誤ってスキルとして評価されているとの報告があるが,異なった結果である.環境やファンド属性との関連については,ノイズトレーダ―仮説やサーチコスト仮説といった先行研究に沿うものであった.ただし,銀行によって販売されたファンドではパフォーマンスとフローの関係が強いことが確認された.銀行の投信販売は規制緩和により広がったものであり,この結果は銀行が新しい投資家層にアプローチしている証左と考えられる.これは,我が国独自の要因であり,より掘り下げた分析を行いたい.以上の結果は,working paperにまとめてあり,学会発表・投稿予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本邦の株式アクティブ投信に関して,先行研究に倣った基本的な分析を終えた.結果は,米国などにおいて投信を対象に得られた示唆を確認するものが多かったが,本邦独自といえる結果も少なからず得られている.基礎的なデータの整備やコンピュータ機器及びソフトも整え,今後の研究拡充への準備ができた.これらは概ね予定通りの進捗である. 3月に上海で行われる予定であった国際学会 Western Economic Association International,16th International Conference での発表が確定していたが,コロナウィルス禍により,中止になってしまったことが想定外の遅れである.今年度以降,online学会も整備されるとのことなので,そうした機会を活用していく.
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今後の研究の推進方策 |
当研究では,本邦投資家の独自性を理解することが目的である.そのために,今後は初年度の結果を拡充させる.現状は対象を本邦の株式アクティブ投信に限っているものを,他のアクティブファンドに広げることを検討する.また,リスク特性推定の制約から履歴の短いファンドを除いているが,それらを取り組む工夫を考える.さらに,海外市場との比較に進む. そこで,今年度中にはデータを拡充を行う.また,コロナウィルス騒動次第ではあるが,国際学会における発表や研究会への参加を積極的に行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は手許のデータにより基本的な分析を行ったため,未使用額が生じた.今年度,資金は予定していたデータベースの新規契約に充てる予定である.
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