研究課題/領域番号 |
19K01766
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
大森 孝造 大阪経済大学, 経営学部, 教授 (80779348)
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研究分担者 |
北村 智紀 東北学院大学, 経営学部, 教授 (80538041)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 投資信託 / 投資家行動 / パフォーマンス評価 / 資金フロー / 投資情報 |
研究実績の概要 |
本研究は,「投資家がどのように投資信託の過去のパフォーマンスを評価するのか」について従来よりも詳細な分析を行うものである.2021年度はデータを更新・拡充して,2020年度までの研究を拡張した.本邦の株式アクティブ投信約1,000本を対象に,パフォーマンスや関連情報と資金フローの関係を調べた.2020年度までの研究にて,日本の投信投資家は,ファンドのパフォーマンスのうち市場要因では説明できないマネージャー独自のαに反応していることを確認している.これは米国における先行研究とは異なって,日本の投資家が洗練されているとの結果であり,2021年11月,査読付き国際学術誌に掲載された. 2021年度はその実態についてより詳細な分析を進めた.上記の結果をもたらしている要因の候補として,①特に米国にて影響が強いことが報告されているファンド・レーティング,②同様に投資家が入手しやすい情報としてファンド・カテゴリー,③先行研究にて指摘されている統計処理のバイアス,を検証した.その結果,レーティングやバイアスの影響ではないことが確認され,カテゴリー情報は弱いながらも考慮されていることがわかった.ただし,これらだけでは先の結果を説明できないため,個別ファンドの動きをさらに調べた.その結果,本邦においては,リターンが高い一部のファンドに急激に資金が集中する現象がみられ,それがαとフローの関係の背景にあることがわかった. 以上の結果をworking paperにまとめ,今年度は,研究会・学会にて発表,学術誌への投稿を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本邦の株式アクティブ投信に関して分析を進め,先行研究に倣ったいくつかの基本的な結果を確認すると共に,本邦独自といえる結果を少なからず得た.さらに,本邦投信市場固有の現象を確認した研究が進んでいる.なお,基本的な結果については,論文として発表できた.これらより,おおむね順調といえる.
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今後の研究の推進方策 |
当研究では,本邦の投資家行動を理解することが目的である.これまでの活動により,国内株式アクティブ投信については,投資家が優れたリスク評価を行っているとの独自の結果を得られた.ただし,この結果の背景には一部ファンドへの資金集中があり,販売会社やファンド情報会社の影響が指摘できる. そこで,今後は販売会社やファンド情報会社の影響の強さや内容について分析を進める.また,分析対象を拡張する.日本株式以外のアクティブファンドや海外市場との比較を行いたい.なお,これまでと同様,内外の学会における発表や研究会への参加は引き続き積極的に行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
最大の経費となるデータベースは所期の支払いを終えており,おおきな変更はない.次年度に移した資金は,国際学会への参加や論文校閲等に使用予定である.
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