研究課題/領域番号 |
19K01768
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
太田 浩司 関西大学, 商学部, 教授 (70366839)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 自社株買い / レピュテーション効果 |
研究実績の概要 |
本年度の申請研究の研究実績としては,自社株買いの達成率の観点から見たわが国におけるレピュテーション効果について検証を行った論文がある。レピュテーション効果とは、市場が企業の開示する情報を信頼性の高いものであると判断した場合には大きく反応し、逆に低いとみなした場合には反応が小さくなるという効果のことである。本研究では、米国の研究に倣って,自社株買いの達成率(実際取得株式数/予定取得株式数)の高さは企業のレピュテーションを高めると考えて、過去の自社株買いの達成率が現在の自社株買いの公表に対する市場の反応に与える影響を短期で調査している。さらに本研究では,わが国独自の開示制度である経営者予想の正確度が企業のレピュテーション効果に与える影響についてもあわせて調査している。 結果は、過去の自社株買い達成率および経営者予想の正確度が高いレピュテーションの高い企業ほど、現在の自社株買いの公表に対する市場の反応はより大きくなっており、わが国市場におけるレピュテーション効果の存在を支持するものであった。これらの結果は、企業と市場の間には信頼関係が存在しており、企業のレピュテーションを高めることは、企業価値にプラスに作用することを示唆するものといえる。さらに,企業のレピュテーションは単一ではなく複数の源泉によって形成されていることが明らかになった。 経営者予想および自社株買いの取得枠の設定は,たとえ未達であったとしても特に制度的な罰則が科されるわけではないが,企業は市場の規律を意識して節度のある行動を取っているものと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究進捗に際して特に大きな問題が生じなかったため,予定していた「自社株買いの達成率の観点から見たわが国におけるレピュテーション効果」に関する論文を出版することができた。従って,本研究課題の現在までの進捗状況はおおむね順調であるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は,自社株買いの公表がBad Newsの影響を緩和する役割を果たしているかについての研究を実施る予定である。本研究は、自社株買いのアナウンスが日米ともに決算発表等と同時に行われることが非常に多いという現象に着目している。そして、自社株買いと同時に公表される情報の内容を精査し、自社株買いがBad Newsと同時に公表される傾向があるのかについて調査する。もし経営者が、単に減益等のBad Newsの影響を緩和するためだけに、自社株買いを同時にアナウンスしているのであれば、経営者には予定買付数量を全て取得する動機が乏しく、結果として達成率(実際買付数量/予定買付数量)は低くなることが予想される。そこで、Bad Newsと同時に公表される自社株買いと、Good Newsと同時に公表される自社株買いの達成率を比較することによって、経営者が自社株買いを実施する動機について解明したい。それ以外にも,Bad NewsやGood Newsと同時公表される自社株買いの取得枠や取得期間についても調査する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 購入予定のデータの販売が遅れたため。 (使用計画) 前年からの持越し分も含めて,本年度は,Financial Data Solutions Inc.が販売する「Fama-French 3 factor関連データ」を購入する予定である。また,企業の情報環境に関する影響をコントロールするために,IFIS社の販売する「IFISコンセンサスデータ」も,全ての期間は買えないので,昨年度同様に予算の許す範囲内で購入する予定である。
|