研究課題/領域番号 |
19K01774
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅原 歩 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (10374886)
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研究分担者 |
高橋 秀直 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00633950)
古賀 大介 山口大学, 大学院東アジア研究科, 教授 (50345857)
布田 功治 亜細亜大学, 経済学部, 講師 (70609370)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 金融危機 / ネットワーク / 商業銀行 / 金融センター |
研究実績の概要 |
本研究の目的はネットワーク理論を金融危機波及の歴史分析に適用して、経済史研究の立場から、金融危機波及のメカニズムを解明することである。第1年目は先行研究の検討による分析フレームワークの構築・共有と、史料収集の開始の年度とした。分析フレームワークではFlandreau et al., Journal of Economic History, 2005とAcemogul et al., American Economic Review, 2015 をそれぞれ出発点とした。Flandreau at al.は、外国為替の建値を通して2地点間の双方向の関係性が検証でき、それによって金融ネットワークが検出できることを示した。Acemogul et al.は、ネットワークの形状と危機の大きさの組み合わせの類型を明確にした。歴史的ケースとしては、第一に1931年のイギリスとアメリカの金融危機を重要な対象としBillings and Capie, Business History, 2011とRichardson and Van Horn, Journal of Economic History, 2009を出発点とした。Billings and Capieは、イギリスの危機は通貨危機であり銀行危機ではないことを各商業銀行の新史料により示し、Richardson and Van Hornは、ニューヨークでは中小銀行が多数破綻したものの大手銀行は財務危機にならなかったことを示した。史料収集については、1930年代のイギリスの主要商業銀行の外国為替取引に関する史料調査を行い、今後のより詳細な調査への見通しを得た。また、本研究では、現代への応用の対象として東南アジアの金融ネットワークにも着目し、現代東南アジアの金融ネットワーク形成について政策的観点からの試論の構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分析フレームワークの構築、史料収集の開始ともに、確実な成果を得ることができた。ただし、プロジェクトメンバーそれぞれの校務の量が申請時の想定よりも重かったことと、年度の終盤にコロナウイルスの影響で予定していた研究会が開催できなかった。そのため、メンバーが一堂に会しての分析フレームワークの共有のための討論が十分にはできなかった。この最後の点を鑑みて、(3)やや遅れている、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の到達点と反省点の双方を生かして今後の研究の推進方策を構築したい。史料調査委については、海外渡航がスムーズに行える状況への回復を待つほかないが、その間にこれまで蓄積した史料についての共同での分析を一層深化させたい。また、研究会の中止で実現できなかった分析フレームワークの共有化もより確実に進展させたい。史料分析についても、分析フレームワークの共有化についても、今年度初頭に急速に普及したオンライン会議を活用し、共同研究実効性を一層高めるとともに共同研究の効率化をはかり、研究の一層の進展につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度終盤に生じたコロナウイルス問題により、メンバー全員の集合によって議論を行うために予定していた研究会の開催ができず、多くのメンバーの出張費が使用できなかった。また、これもコロナウイルス問題により一部のメンバーは史料調査のための海外渡航を行うことができなかった。次年度は、前年度にできなかった分の研究会の開催を追加し、またオンライン会議を導入することを考えてそのためのPC環境の整備を行う。また、史料収集についても海外渡航が可能になれば追加で実施する予定である。海外渡航が容易でない場合にも備え、アルバイトをやとってこれまでに蓄積した史料の整理の速度をあげ、共同での史料分析につなげることも計画している。
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