2021年度には、フランス政府が実施していた第3次設備近代化計画(1958年~1961年)と第4次設備近代化計画(1962年~1965年)以降における石炭、電力などエネルギー産業の発展に関する資料の調査分析を行った。それらの作業によって、第3次計画と第4次計画以降のエネルギー産業が以下のような発展と問題点を抱えていたことを解明した。 第2次計画の末期にはフランスはインフレ、国際収支の悪化、財政赤字の拡大など経済危機を迎えていた。そのため第3次計画では外貨不足(フラン危機)を回避するために、エネルギー資源の輸入を制限することが急務となっていた。そこでアルジェリアで発見された油田の開発が開始され、フラン流通圏からの石油や天然ガスの調達が計画され、外貨の節約が図られた。さらに、1959年から石炭市場が過剰供給状態になり、西ヨーロッパ諸国にはいわゆる石炭危機が到来した。そうした状況を受けて、フランスでも国有炭鉱会社は石炭生産を縮小し、人員整理や石炭採掘以外の関連業種へ業務転換に着手した。したがって、1950年代末以降フランスでも石炭から石油へのエネルギー転換が顕著になっていたのである。そこでは、フランス政府はヨーロッパ石炭鉄鋼共同体と協力して、労働者の転職を補助、促進した。さらに、同政府は採炭地域の経済構造の転換、再開発も実施したのである。 これらの事実を解明した成果は、論文として『エコノミア』第72巻第1号(2022年3月)に発表し、政治経済学・経済史学会、ヨーロッパ統合史フォーラム(2022年3月)でも報告した。今後も論文などで発表するとともに、政治経済学・経済史学会、全国大会(2022年10月)でも報告する予定である。
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