戦前期商社は、従業員に占める学卒者(高等教育修了者)の割合が他の業種に比較して著しく高い一方で、キャリアパスや賃金では学卒者と非学卒者の処遇の差は希薄であるという特徴を持っている。本課題では、その理由を明らかにすべく戦前期商社で発生した内部不祥事を考察した。分析の結果、横領などの内部不祥事(解雇事案)は非学卒者が圧倒的に多く、そのため会社は学卒者を積極的に採用し、学卒者の増加と共に、内部不祥事の発生件数は減少したことが判明した。これは高い規律意識を持った人材を生み出すことに成功した高等教育の意義と評価できる。
|