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2021 年度 実施状況報告書

富岡製糸場における女性労働環境の変容に関する史的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K01789
研究機関法政大学

研究代表者

榎 一江  法政大学, 大原社会問題研究所, 教授 (90466813)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード製糸業 / 寄宿舎 / 女性労働 / 生糸
研究実績の概要

本研究の目的は、富岡製糸場の115年におよぶ女性労働の歴史を通時的に分析することによって、日本の製糸労働史をグローバル・レイバーヒストリーに位置付ける点にある。
今年度は、日本資本主義と女性労働をめぐる議論を整理したうえで、欧米で興隆したジェンダーの歴史学が描く工業化と女性労働をめぐる議論が、日本にそのまま当てはまらないことを確認したうえで、雇用労働市場において女性や子どもの使用が制限される世界的な潮流の中で、農村出身の未婚の女性が日本の経済発展を底辺で支えていたことを日本の工業化の特徴とするジャネット・ハンターの議論を援用しつつ、近代日本の女性労働をめぐる論点を抽出した。その特徴は、第一次大戦後の労働市場の変容と改正工場法の施行というインパクトを重視する点にある。具体的には、改正工場法が女子労働者保護を進めた反面、女子労働者の解雇・賃金低下等をもたらし、それが現在へと続く女子労働者の地位の不安定性につながったという見解である。これが主に言説分析によって規範やイデオロギーのレベルで主張されたのに対し、本研究は、実際の生産現場でどのような変化が見られたのかを富岡製糸場の事例から考察した。
その結果、富岡製糸場が高い生産能力を維持しながらも、女子労働者に対する教育・衛生施策を後退させていた可能性を確認した。改正工場法や健康保険法の施行によって女子労働者を雇用するコストが増大するなかで、製糸業の機械化ともいうべき多条機の導入が進んだものの、寄宿舎等への投資ができていなかったのである。そのため、富岡製糸場は、その経営を片倉製糸に委ねざるを得なかったのではないかとの着想を得たが、片倉製糸による富岡製糸場の経営については、改めて検討を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究成果については国際学会で報告する予定であったが、新型コロナ等の影響で国際学会自体が2年延期されたため、報告準備もやや遅れている。

今後の研究の推進方策

本年度は、富岡製糸場開業150年にあたり、記念シンポジウム等での報告が予定されているため、これまで十分にできなかった群馬県での調査研究活動を活発化させ、準備を行う。また、報告を予定していた国際学会が7月に対面とオンラインのハイブリッドで開催されることが決まったため、セッションに向けた準備を進める。

次年度使用額が生じた理由

現地調査ができず、報告を予定していた国際学会も延期となり、旅費の使用がなかったことに加えて、アルバイト雇用ができず、資料整理謝金の支払いもなかったため。現地調査が可能となり、報告予定の国際学会が開催される際に、旅費及び資料整理謝金として支出する計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 「日本資本主義と女性労働――富岡製糸場の事例から」2022

    • 著者名/発表者名
      榎一江
    • 雑誌名

      『経済志林』

      巻: 89‐3 ページ: 47-75

    • オープンアクセス

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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