研究実績の概要 |
本年度は、11月にリヨンで開催されたワークショップ(Workshop Weaving the World with Silk.Trade, Production, Skills and Gender in a Global Perspective from the Sixteenth to the mid Twentieth century)に参加した。Pierre Vernus氏、Manuela Martini氏、橋野知子氏ら編者との最終的な打ち合わせを経て、シルクのグローバルヒストリーに関する論集(A Global History of Silk: Production and Trade, 16th-20th Centuries)に論文を提出することができた。これは、2024年に刊行される予定である。 最終年度に提出したこの論文では、1872年に官営模範工場として開業し、民間に払い下げられたのちも1987年まで操業を継続した富岡製糸場の事例をもとに、日本製糸業における女性労働の展開をグローバルヒストリーに位置付ける試みを行った。これは、研究期間全体を通じて検討してきた富岡製糸場における女性労働環境の変容を従来とは異なる視点でまとめたものであり、その成果を海外に向けて発信することができたと言えよう。また、3月末には、福井県勝山市で開催されたゆめおーれ講演会「近代勝山と絹――繭・生糸、そして織物へ」(於はたや記念館ゆめおーれ勝山)で「近代日本の蚕糸業」と題する講演を行い、羽二重生産で有名な福井県における蚕糸業の展開について検討する機会を得た。研究期間全体を通じて富岡製糸場の事例からシルクのグローバルな展開について考察を深めてきたが、改めて地域の蚕糸業史を再考する視点を得ることができた。
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