研究課題/領域番号 |
19K01793
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
松村 敏 神奈川大学, 経済学部, 教授 (60173879)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大名華族 / 資産家 / 家老華族 |
研究実績の概要 |
前田家史料所蔵者である公益財団法人前田育徳会が、コロナ騒動のため、2020年2月~2021年10月まで閲覧停止となったため、前田侯爵家の分析は一時中断した。連動して横山男爵家の分析も、前田家と大いに関連していると考えられることから一時中断した。 その間に、懸案の明治期毛利家の分析を、前田家との比較という視点から進めた。これは予想以上に進展し、成果を公表できた。続いて毛利家の大正・昭和戦前期についても分析を進め、こちらも新しい論点を多く発見できた。毛利家(さらに付随的に岩国吉川家)の分析を行ったことは、前田家の個性を明確にするうえできわめて重要であった。 2021年11月から前田家の分析を再開したところ、これまた予想外の論点を発見しつつある。ただしコロナ騒ぎの影響も残り、前田育徳会における史料閲覧の制限が強く、月1日しか閲覧が許可されない場合もあり、かつ分析すべき史料が大量であることもあって、今後の進捗も緩やかなものと予想される。 横山家についても、中断の間に、ご当主やその他の機関から新たな史料を発見したとの連絡を受け、改めて史料調査と収集を行う必要が発生した。これは2022年度に行う予定である。これらの新史料を利用することによって、一層充実した分析が可能になるはずである。 全体として研究成果の意義は、1)大藩大名華族の立ち入った分析はこれまで極めて少なく、とりわけ前田・毛利はまったく手つかずであったが、それを行ったこと、2)前田と毛利の資産運用のありかたは全然異なること、したがっておそらくどの家が典型ということはなく、一つ一つ全部異なり、豊かな個性をもつはずという見通しを得たこと、3)その個性は、じつは前近代の大名家のあり方と密接に関連していたり、連続性が明瞭であったりして、いいかえれば、近代の大名華族資産家のあり方には、顕著な歴史的経路依存性がみられることを明らかにした点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記のように、コロナ騒ぎによって、旧加賀藩関係華族資産家の分析は一時中断したが、その間に毛利公爵家の分析を進めたことが、前田家分析にとってもよい効果をもたらした。また前田とは全然異なる毛利家の強い個性も明らかになって、これまでだれもまったくふれられていない新しい論点を多数提示できた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は大正・昭和戦前期の毛利家に関する分析を発表するとともに、明治後期の前田家・横山家の史料収集と分析もできるだけ進めて、早く発表したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ騒動のため、主要な史料を所蔵している公益財団法人前田育徳会が、2年近くにわたり、閲覧停止となったこと、閲覧再開後の現在もなお閲覧制限が継続されていること、分析すべき史料が大量にあり、分析に長期間かかっていることによる。今年度はやや高価な物品を複数購入する予定であり、今年度ですべて使用する予定。
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