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2022 年度 実績報告書

武家華族の資産形成と投資の性格―旧加賀藩関係華族を中心に―

研究課題

研究課題/領域番号 19K01793
研究機関神奈川大学

研究代表者

松村 敏  神奈川大学, 経済学部, 教授 (60173879)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード大名華族 / 資産家 / 家老華族 / 資産運用
研究実績の概要

(1)大正・昭和戦前期の毛利家について、加賀前田家その他の大藩大名華族との比較分析によって、種々の興味深い知見がえられた。まず昭和金融恐慌によって華族らが大打撃を被ったという従来の通説は、でたらめであった。むろん十五銀行株を所有しておれば、同株価値の棄損によって損失を被ったことは事実であるが、同恐慌によって毛利・前田ほかほとんどの華族の受けた打撃は、各家の総資産に対してたいしたものではなかった。むしろ昭和恐慌による株価の下落、配当率の低下の方がより深刻であった。また関東大震災によってかなり打撃を受けた有力大名華族も存在した。そしてそのような恐慌よりも、毛利家にとって大きな打撃となったのは、1938年の代替わりによって発生した相続税賦課であった。この点、毛利家以外では、家によって異なる。島津家のように相続がなかったために(または前田家のように相続があっても同税免除になる戦死による相続のために)日露戦時期に創設された同税を賦課されなかった家もあれば、2度賦課された家もある。しかし昭和戦中期以降に同税税率が急上昇するまではそれほどの税率ではなかったから、相続税によって資産家としての根幹が揺らぐようなことはほぼなかったし、毛利家も同様であった。
(2)大正期以降、資産額時価が急上昇した大名華族は、東京近辺に広大な土地を所有していた家であった。典型は前田家・肥前鍋島家などである。前田は昭和期に資産額時価のほぼ半分が土地であった。昭和のトップクラスの大名華族は都市地主貴族だった。毛利も東京付近に明治末まで前田を上回るほどの土地を所有したが、値上がりするとさっさと売却したため、もっと値上がりするまで売らなかった前田に資産額で差をつけられた。毛利は幕末以来ややせっかちなところがあった。
(3)毛利は大正期以降それまで同家に影響力があった井上馨ほかの元老らが没したため、自己犠牲的姿勢が弱まった。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] [シンポジウム報告記録]武家華族資産家の歴史的個性―近代と前近代の連続性・関連性についてー2022

    • 著者名/発表者名
      松村 敏
    • 雑誌名

      「商経論叢」(神奈川大学)

      巻: 57巻4号 ページ: 1-12

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 大正・昭和戦前期における毛利公爵家資産の性格変容ー日本における「日の名残り」ー2022

    • 著者名/発表者名
      松村 敏
    • 雑誌名

      「商経論叢」(神奈川大学)

      巻: 58巻1号 ページ: 27-133

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 武家華族資産家の歴史的個性―近代と前近代の連続性・関連性についてー2022

    • 著者名/発表者名
      松村 敏
    • 学会等名
      シンポジウム「大名華族家と地域社会」(主催 加賀藩研究ネットワークなど)
  • [学会発表] 大正・昭和戦前期における毛利公爵家資産の性格変容ー日本における「日の名残り」ー2022

    • 著者名/発表者名
      松村 敏
    • 学会等名
      社会経済史学会第91回全国大会
  • [図書] 小松市史 通史編Ⅱ2023

    • 著者名/発表者名
      小松市
    • 総ページ数
      780
    • 出版者
      北國新聞社

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公開日: 2023-12-25  

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