本研究は歴史の見方に反省を迫るものである。従来の研究は、本研究でとり上げた産業看護婦、インダストリアル・エンジニア、公衆衛生運動の指導者たちの働きを人事管理の「起源」や「源流」として位置づけてきた。しかしながら、この人たちは誰ひとりとして、人事管理運動にかかわることを予想して職業選択をしたわけではなかった。ある日突然、人事管理と出会うのであり、その結果として、否応もなくこの管理運動に合流していくこととなる。この人たちの主観的な思いに即して歴史を再構成するならば、人事管理生成史というのは、予期せぬ邂逅の物語にほかならなかった。
|