研究課題/領域番号 |
19K01797
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
鹿野 嘉昭 同志社大学, 経済学部, 教授 (60241767)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国立銀行 / 銀行論争 / 明治9年の銀行条例改正 / 金禄公債 / 秩禄処分 |
研究実績の概要 |
「再考:明治4年の銀行論争」(査読あり)、日本金融学会『金融経済研究』第42号、2019年8月。 本論文は国立銀行のあり方をめぐって大蔵省内で交わされた論争を多くの論者により利用された文献資料の精読を通じて再検討するものであり、次のような知見を新たに見出すことができた。すなわち、第1に、通説では伊藤博文が米国流の紙幣銀行に固執したことが論争を長引かせたと理解されているが、実際に自説を曲げなかったのは正金銀行構想を主張する吉田清成であった。第2に、論争を裁定した井上馨は日本人の国民性を踏まえて兌換準備率については4割に決定した。
「なぜ国立銀行の創設は4行にとどまったのか」(査読なし)同志社大学『経済学論叢』第71巻第4号、2020年3月。 本論文は、明治4年から5年にかけて数多くの富豪が銀行の設立を希望していたにもかかわらず、国立銀行の創設が4行にとどまった背景について検証するものである。その結果、大蔵省が設立許可に関して慎重姿勢を維持していたことに加えて、国立銀行の収益性が低いと判断されていたことが新たに見出された。
(学会報告)「明治9年の国立銀行条例改正」(日本金融学会2019年度秋季大会、2019年10月、甲南大学)。本報告は明治9年の国立銀行条例改正をめぐる動きについて国立銀行4行の経営状況や政府の金禄公債発行決定を踏まえて実証的に検討することを狙いとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に掲げた4つの課題、すなわち①国立銀行が4行にとどまった背景の検証、②明治9年の国立銀行条例改正までの時期における国立銀行の経営状況に関する分析、③国立銀行条例改正の背景および条例改正が銀行性津率や日本経済に及ぼした影響に関する検討、④海外投資家による国立銀行のありように関する評価、のうち①から③までの課題については予定どおりの研究を進めることができたから。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの方針に沿って引き続き研究を推進する予定。ただし、本年1月に英国国立公文書館を訪問しのうえ国立銀行関連の資料を検索したが、目ぼしい資料を探し出すことはできなかった。その一方で、日本が明治初年に円を中核とする近代貨幣制度を構築するに際し、英国が強く関わっていたことを示唆する資料を発見した。これらの事実を踏まえ、20年度以降は海外投資家による国立銀行のありように関する評価に代えて、日本における近代幣制の設立に英国がどのようにかかわっていたのかについて研究を進めることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本金融学会秋季大会が神戸市所在の甲南大学にて開催されたため、予定してた同学会参加にかかわる出張旅費が不要になったため。
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