研究課題/領域番号 |
19K01797
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
鹿野 嘉昭 同志社大学, 経済学部, 教授 (60241767)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 金本位制 / 金本位制建議 / 二分判金 / 金銭相場 / 大銭 / 小額貨幣 / 明治9年国立銀行条例改正 / 国立銀行経営 |
研究実績の概要 |
「伊藤博文の金本位制建議はなぜ受け入れられたのか」同志社大学『経済学論叢』第72巻第3号、2020年12月。 本論文は、明治4年の新貨条例制定に際し、米国出張中の伊藤博文からの金本位制移行建議が受け入れられた背景を検討のうえ、江戸時代の二分判金の純金量と同等の金貨を本位金貨とする金本位制を定立すれば江戸時代の幣制から新しい幣制への移行がスムーズに実施しうることが判明したため、政府は直ちに伊藤建議を受け入れたことを明らかにした。
「江戸中期からの金銭相場の動きをどのように理解するか」、岩橋勝編著『貨幣の統合と多様性のダイナミズム』、晃陽書房、2021年2月。 本論文は、18世紀後半以降における金銭相場の銭安化とその後の金1両=6.5貫文という水準での安定化の背景について数量経済史の立場から統計的に検証することを狙いとし、四文銭や百文銭という大銭の増鋳および二朱金など小額金貨の流通拡大とそれに伴う一文銭需要の減退を契機として銭貨供給が構造的に過剰となったことが主たる要因であるという従来とは異なる知見を提示した。
「明治9年の条例改正後における国立銀行の経営状況」(日本金融学会2020年度秋季大会、2020年11月、岡山商科大学<オンライン開催>)。 本報告は、明治9年の条例改正後における国立銀行の経営状況を統計的に検証しようとするものであり、第十五国立銀行および第一国立銀行という巨大銀行を除いた大多数の銀行は小規模であるとともに、銀行券発行に資金調達を依存していた発券銀行であったことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に掲げた4つの課題、すなわち①国立銀行が4行にとどまった背景の検証、②明治9年の国立銀行条例改正までの時期における国立銀行の経営状況 に関する分析、③国立銀行条例改正の背景および条例改正が銀行性津率や日本経済に及ぼした影響に関する検討、④海外投資家による国立銀行のありように関する評価、のうち①から③までの課題については予定どおりに研究を進めるとともに、その成果を公表することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの方針に沿って引き続き研究を推進する予定。ただし、昨年1月に英国国立公文書館を訪問のうえ国立銀行関連の資料を検索したが、目ぼしい資料を探し出すことはできなかった。その一方で、日本が明治初年に円を中核とする近代貨幣制度を構築するに際し、英国が強く関わっていたことを示唆する資料を見出した。これらの事実を踏まえ、21年度は海外投資家による国立銀行のありように関する評価に代えて、日本における近代幣制の設立に英国がどのようにかかわっていたのかについて研究を進めることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ渦に伴い参加を予定していた学会がオンライン開催や中止となったほか、海外出張ができなくなったことで、旅費が不要になったため。
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