本研究補助は当初、21年度で終了の予定であったが、予定していた海外出張がコロナ禍で実施不能となったため、22年度まで1年間繰り下げたものである。しかし、コロナ禍が完全に落ち着くことはなかったため、海外出張は断念することにした。 もっとも、本年度における研究は次のとおり順調に進展した。すなわち、第1に、研究課題である「わが国ににおける近代銀行制度の成立過程」に関連して発表してきた研究論文をまとめて「日本近代銀行制度の成立史」(東洋経済新報社、2023年3月)と題する研究書を刊行することができた。この研究書の刊行により、研究課題で狙いとしていた日本の近代銀行制度の成立過程を、江戸時代の両替商金融の機能から始め、殖産興業政策のなかで創設された為替会社の意義と限界、さらにはその破綻処理の後、国立銀行が創設され、明治9年の条例改正により、当初期待された金融機能を漸く発揮するようになったことを文献資料のみなまらず各種の統計により実証的に明らかにすることができた。 第2は、21年度から重点を置いてきた明治初年から始まった近代貨幣制度の整備過程に関する研究である。この研究課題についても、「文久遣欧使節、改税約書と新貨条例」(大阪経済大学日本経済史研究所『経済史研究』第26号、2023年1月<査読付き>)および「貿易収支、洋銀相場と金銀貨の流出:金本位制から「紙幣専用ノ制」への変容」」同志社大学『経済学論叢』第74巻第4号、2023年3月)という研究論文2本を刊行することができた。
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