研究課題/領域番号 |
19K01799
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山井 敏章 立命館大学, 経済学部, 教授 (10230301)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自治体合併 / バーデン・ヴュルテンベルク / 民主主義 / 市民イニシアティブ |
研究実績の概要 |
2021年度は、過年度にドイツで収集した諸史料、とくにバーデン・ヴュルテンベルク州の自治体連合体が発行する機関紙を利用して、1960年代後半から70年代初めに実施された自治体合併のプロセスを検討した。「経済の奇跡」ともよばれる1950年代以降の急速な経済成長の下で人々の生活圏に大きな変化が生じ、旧来の自治体の境界とのずれが顕著になった。また、生活インフラの充実・改善に対する人々の欲求も大きく高まり、小規模な自治体はこれに応える十分な人的・財政的能力をもたなかった。こうした状況をうけてドイツ(西ドイツ)の各州政府は自治体合併を推し進めようとしたのであるが、これに対して、合併吸収の対象となる自治体を中心に、自治体側から強い懸念と反対の声が上がった。 自治体側の懸念と反対は、自治体こそが民主主義の基盤をなすという戦後西ドイツ民主主義の基本理念と結びついていた。実際、自治体合併の終了後、それがドイツの民主主義の根幹を傷つけたとの批判が各方面からなされている。ただし、戦後ドイツの民主主義について考える場合、1960年代から70年代にかけて、市民グループによるさまざまな抗議・要請活動が広がったことに留意する必要がある。こうした活動の多くはローカルなレベルで展開し、自治体当局が抗議や要請の向けられる相手になった。自治体もその枠組みのうちにある代議制民主主義と市民の直接民主主義的行動とが、自治体合併のさなかに、そして自治体合併と結びつきつつぶつかりあったのである。 今年度は、おおむね以上のような内容をもつ論文の執筆を進めたが、残念ながら完成には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 新型コロナウイルス感染拡大が収まらず、予定していたドイツ出張は果たせなった。そのため史料収集に支障が生じ、研究の進捗に遅れが生じることになった。
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今後の研究の推進方策 |
現在執筆中の論文を完成し、学術雑誌に投稿する。ウイルス感染に伴う渡航制限や現地での活動の制約が解かれる見通しが出てきたので、夏期ないし春期休暇中にドイツに出張して史料を収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウイルス感染拡大が収まらず、予定していたドイツ出張ができなかった。2022年度には、夏期ないし春期休暇中にドイツに出張して史料を収集する。研究用にノートパソコン1台を購入する。
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