研究課題/領域番号 |
19K01806
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
吉澤 康代 香川大学, 地域マネジメント研究科, 准教授 (60567379)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ワークモチベーション / キャリア後期 / 定年後再雇用 / 60代 / 修正版グラウンデッドセオリーアプローチ |
研究実績の概要 |
本研究は、「ライフキャリアにおけるワークモチベーションのダイナミズムと要因的経験のモデル化(16K03868基盤研究(C))」の調査研究をベースに、対象をキャリア後期(50代後半以降から60代)」へと絞り込み、総合化学A社の協力を得て50代後半~60代社員(413名)を「ポストとジョブの変化」「ワークモチベーションの状況」の点から分類し、2021年度、調査対象者においてオンラインが日常化したことから、方法を対面からオンラインに変更してヒアリング調査を行った。
本調査は、2021年時点で既に定年退職し、再雇用者として1、2年の経験を積んでいる61~62歳を対象に、2021年5~6月に実施した。対象者の内訳は、元担当課長4名(内1名女性)、元課長1名、元部長5名で、対象者1名に対して面接者2名が個別に約60~90分のオンラインによる半構造化面接を実施した。調査項目は(1)キャリア後半、ここ10年の働くモチベーション、気持ちなどについて、(2)これまでの経歴の概略、(3)60歳を超えて働き続けるためのアドバイスを設定した。
定年前後で職務内容とポストの変化状況から、10名の内4名(元担当課長3名、元部長1名)の結果について修正版グラウンデッドセオリーアプローチを用いた予備的分析を行った。その結果、再雇用者は処遇の低下や身分変更による影響が大きく、新たな役割獲得、自尊意識の確立には困難が伴うが、その助けになるのが「60歳以前との連続性」であることが分かった。しかし、再雇用後の仕事と処遇のアンバランスさを生むのも「60歳以前との連続性」であった。「60歳以前との連続性」のアンビバレントな効果を、「仕事の意味づけ」「WM維持・向上」に導くには、再雇用に向けたマインドセットを個人の技量に頼らず、「再雇用後に向けた検討機会」の組織的な導入をより積極的に進めることが重要であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では調査内容が対象者の内面に関する事が中心となるため、(1)対面によるヒアリング調査が適切である、(2)対象者が50代後半~60代と比較的重症化しやすい年齢である、(3)同年代層はオンライン環境への適応に時間を要すると考え、2020年度は新型コロナウイルス感染症が収束するのを待ち、結果としてヒアリング調査を延期した。
2021年度は、同年代層においてもコロナ禍のオンライン環境への適応が進んだと判断でき、オンラインによって調査を再開することができた。オンラインによる調査でも、調査内容の質を担保できることが確認できたため、引き続きオンラインを活用した調査を実施することで、2020年度の遅れをカバーすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、引き続き60代の調査を実施し、これまでの調査結果との比較分析を精査する。2021年度調査では、対象者を「定年前後の職務内容とポストの変化状況」によって抽出したが、今年度は別視点による対象者の抽出を検討する。また「再雇用後に向けた検討機械の組織的導入(とその効果)」の事例研究を行い、キャリア支援の現場におけるキャリア後期のワークモチベーションの理論的モデルと組織的支援のフレームの構築につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大による本務校の県外移動禁止命令などにより、研究会への参加、調査協力者との打ち合わせ、調査などにかかる出張旅費が支出されなかったことが大きな理由である。一方、オンラインでの活動に不自由がないように環境整備への支出、オンラインで参加可能な研究会や研究活動への参加、アンケートなど調査方法の変更・追加を検討し、支出する予定である。
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