研究課題/領域番号 |
19K01810
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
鹿住 倫世 専修大学, 商学部, 教授 (00349193)
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研究分担者 |
高橋 徳行 武蔵大学, 経済学部, 教授 (60366838)
河合 憲史 上智大学, 経済学部, 准教授 (20867478)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 女性起業家 / Meaningfulness / やり甲斐 / 生き甲斐 / 働き甲斐 / 支援政策 |
研究実績の概要 |
女性の起業におけるやり甲斐、生き甲斐、働き甲斐について、2019年度は、先行研究の文献レビューと、すでに収集していたデータの再分析から、新たなモデルの糸口を探る研究を行った。 先行研究のレビューは、主に起業とストレス、起業と健康、起業と心理的変化(達成感、不確実性に対する耐性)、社会的認知と企業の成長、起業家へのサポートと企業の成長といった切り口で、できるだけジェンダーあるいは女性起業家にフォーカスした論文等を収集、分析した。また、起業家の心理的変化を分析する研究方法についても、心理学分野の論文等をレビューし、調査票設計の準備に活かした。多くの先行研究は量的分析によって起業と健康、心理的変化と事業の成長などについて分析しているが、心理学的な実験の手法は実施するのが困難なため、質的分析を含めた研究方法について文献を収集、分析した。 分析モデルを構築するための準備として、以前収集した女性起業家に対する質問紙調査のデータを再集計し、女性が起業することに対する社会的認知の状況が、起業家の心理的特徴の一つである自己効力感や粘り強さにどのように作用し、結果として事業の成長にどのような影響を与えているのかを再分析し、論文にまとめた。 さらに、インドネシアの女性起業家の現状と支援策のあり方について、インドネシア政府の担当部局と意見交換する機会を得た。各国の女性起業家が置かれた状況、取り巻く環境と女性起業家のやり甲斐等に対する支援のあり方について、有益な知見を得ることができた。こうした各国の政策、女性起業家の状況に関する情報収集についても、インターネット等を活用して実施した。またノルウェーの女性起業家研究者と意見交換する機会を得て、政策や制度上、男女平等であっても、実際の生活においてはジェンダーギャップが存在する場面もあることを知った。政策の限界について考慮すべきであるという知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に実施する予定であった、「国、地域における女性起業家を取り巻くコンテクストに関する分析」は、英国、台湾、ノルウェー、ネパールにおける起業に関するデータ、特にジェンダーギャップ、教育、キャリア、社会規範など女性を取り巻く諸環境に関するデータの収集に努めた。 また女性にとっての企業の意義とコンテクストの影響に関する分析については、今年度はモデルの構築のため、以前収集した日本の女性起業家に対する質問紙調査のデータを再分析し、社会的認知という地域のコンテクストと、起業の経済的意義、心理的特徴(自己効力感、粘り強さ)の関係を分析した。この分析結果と、女性の起業と心理的変化、個人的意義に関する先行研究のレビューによって得た知見から、女性起業家が認識するコンテクストと起業の経済的意義(売上、雇用、利益など)と個人的意義(やり甲斐、生き甲斐、働き甲斐など、ストレス、健康も含む)の質問紙調査のための質問紙設計準備を行った。 本来は、予備調査として女性起業家自身に対するインタビュー調査を実施する予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大により、現地での対面インタビューの実施が困難になり、2020年度に事態が収束してから実施するか、あるいはオンライン会議システムを用いた遠隔インタビューによって実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度に新型コロナウィルスの感染拡大により実施困難となった、女性起業家への対面またはオンラインによるインタビュー調査を実施する(日本20件、台湾、ネパールなど外国計40件程度)。インタビュー調査の結果の分析および先行研究のレビュー結果から、質問紙の設計を行い、ウェブ調査会社を利用して質問紙調査を実施する。分析は統計ソフトを用いて行い、女性を取り巻く経済、社会環境、コンテクストと、起業家の個人的意義、および経済的意義の関係を明らかにする。 また、女性の起業支援政策について、台湾、英国、ネパール、ノルウェー、そのほかの国について情報収集、分析を行い、特に政策の変遷と成果について資料収集、関係者へのインタビュー調査を実施し、質的に分析する。これも、新型コロナウィルスの感染拡大により現地でのインタビューが困難な場合は、オンライン会議システムによる調査に切り替える。 これらの分析により、国や地域の女性の起業を取り巻くコンテクストの違いを踏まえ、女性の起業支援、特に経済的成長とともに個人的意義や心理的充実への支援のあり方について、関係性を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に実施する予定であった、日本国内および海外の女性起業家への現地インタビュー調査について、新型コロナウィルスの感染拡大により実施が困難となったため、2020年度に実施する予定である。 また、女性起業家へのインタビュー調査を予備調査として、質問紙の設計を行い、質問紙調査を実施する予定であったが、上記の理由によりインタビュー調査が実施困難となったため、質問紙調査も2020年度に実施することとした。
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