本年度は、㈱アイアールシーの倒産に伴って、既に構築済みであった同社資料を用いたデータベースの拡充ができなくなったことから、新たに総合技研㈱の資料『主要自動車部品255品目の国内における納入マトリックスの現状分析』の2001年版~2022年版(3年ごと)を用いて、①延べ300個近い主要自動車部品に関する2001年から2022年にかけての詳細な取引関係のデータベースを構築した。また、特許調査会社を通じて2010年~2022年の自動車メーカー特許出願データを新たに購入し、既に構築済みであったデータと接合して、②1983年から2022年までに自動車メーカーと部品サプライヤーが共同で出願した特許のデータベースを構築した。次に、自動車部品取引(モノの取引)と知識取引(共同特許から見た先端的技術分野での共同開発関係)のネットワーク構造の変遷について、分析と比較を行った。その結果、2010年~2022年にかけて、主要自動車部品サプライヤーでの合併等が顕著に増えた影響から、部品取引の面でのネットワーク構造は大きく変化したことが明らかになった。また、同期間中、自動車メーカーによる特許出願件数が顕著に減少する一方で、部品サプライヤーとの共同出願特許の割合は増加し、知識取引における「オープン化」の傾向は強まっていたことも明らかになった。 加えて、昨今のガソリン自動車から電気自動車への急速な製品転換(モジュール化)が自動車・自動車部品産業の市場構造や取引関係に及ぼす影響について調査するため、上記データセットをもとに自動車の電気・電子部品の取引関係の変化についても、探索的な分析を行った。 さらには、一足先にモジュール化が生じ、市場構造、部品取引関係、企業の競争力に大きな変化が生じた90年代の日本PC業界を定量的・定性的に分析し、現在の自動車産業の置かれている状況と比較する作業を進めた。
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