研究課題/領域番号 |
19K01814
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
青木 克生 明治大学, 経営学部, 専任教授 (20318893)
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研究分担者 |
Olcott George 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (80751552)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 知識移転 / 多国籍企業 / 日本的経営 / パラドックス |
研究実績の概要 |
2020年度は,文献研究と研究成果出版という点において一定の成果を残すことができたものの,その一方で当初予定していた海外・国内実態調査はコロナの影響を大きく受けることとなった。海外調査の実施は渡航制限などから不可能であった。一方,国内調査についてはズームでのインタビューを受け入れて頂いたトヨタに対してのみ可能となった。トヨタについては,Global Production Centerのスタッフの方々に対し日本的熟練・技能の伝承と,それをベースとした海外工場支援のあり方についてのインタビューを実施した。 文献研究については,日本企業の海外知識移転の包括的な文献レビューをlean productionという概念を中心に実施した。1980年代のセオリーZや文化論から機能的アプローチ,批判的アプローチ,さらには相反する側面に分析の焦点を置くパラドックス・アプローチへと至る流れを包括的に網羅したレビューを実施した。このレビューの結果は,“Lean production from the view of management theory: Functional, critical and paradox approaches”. In Janoski, T and Lepadatu, D. (eds), The Cambridge international handbook of lean production: Diverging theories and new industries around the world. Cambridge: Cambridge University Press, pp.35-63, 2021として出版されている。 研究成果の出版という点においては,2019年にアクセプトされた論文“The roles of material artifacts in managing the learning-performance paradox: The kaizen case”がAcademy of Management Journal, 63(4)からの出版に至ったほか,上記のケンブリッジ・ハンドブックの論文が出版される運びとなった。それ以外の成果は,Strategic Management Journal,California Management Review,Human Relationsなどのジャーナルで現在審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究進捗状況については,「やや遅れている」との判断が妥当であろう。文献研究についてはAcademy of Management Journal, Academy of Management Review, Strategic Management Journalなど海外主要ジャーナルを網羅しているが,コロナの影響から海外実態調査が思うように展開できていない。本年予定していたアジアとアメリカの調査は実施が不可能であった。その一方で,研究執筆と出版については概ね順調に進展している。 研究成果の出版につては,Olcott氏との共同論文 “A dynamic equilibrium model of boundary spanning: Managing hybridization of practices in Japanese multinational companies”が戦略論のトップジャーナルであるStrategic Management Journalへと投稿され,現在は2ラウンド目の審査の最中である。それ以外にも,Staebleinとの共同論文“How manufacturing capabilities support potentially disruptive technologies: Daimler, Toyota and Tesla embracing vehicle electrification”がCalifornia Management Reviewへと投稿され,現在審査中である。また単著論文 “Managing the Change-Stability Tension: Emotional Interplay and Countervailing Activities” もHuman Relationsへと投稿され,現在審査中となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の計画について,a.理論概念の発展,b.海外子会社と日本本社への実態調査,c.研究成果の公表,の3つに焦点を当ててみていく。aについては,引き続きAcademy of Management Journal, Academy of Management Review, Administrative Science Quarterlyなどから関連論文をピックアップし,多国籍企業における知識移転についての理論動向の包括的な整理を進めていく。それと同時に,ハイデガー,デューイ,ミードなどの哲学・社会学の文献(著書)をベースに,知識移転の理論的な土台を固める作業も進めていく。 bについては,昨年と同様に,現状ではコロナウィルスの影響でインタビュー調査の見通しが立てられていない。可能であれば,秋以降にアジア(中国,マレーシア,タイ)と欧州(イギリス,ドイツ,スイス)で知識移転に関わる海外駐在員と現地マネジャーとの間の分業体制などに焦点を当て実態調査を展開していきたい。 cについては,Strategic Management Journal,California Management Review,Human Relationsで現在審査中の論文をさらにブラッシュアップしていくと同時,理論概念の発展と関わる文献研究の成果をベースとして理論・レビュー論文を執筆・投稿していく予定である。投稿先の候補としてはAcademy of Management Review,Organization Theoryなどがある。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ渦の影響により当初予定していた海外・国内調査の展開と海外学会出張の実現が実行可能とはならなかった。本研究の予算のほとんどはこれらの出費を前提としていたため,大幅に余る運びとなってしまった。2021年度は,コロナ渦が落ち着き,可能となれば,2020年度に予定していた調査を展開する予定である。このように大幅な予算の繰り越しの必要性が生じたため,研究最終年度を1年間延長させ,2022年度を含めて全ての調査を終了させる予定である。
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