研究課題/領域番号 |
19K01815
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山田 英夫 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (20220395)
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研究分担者 |
大木 裕子 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (80350685)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 競争戦略 / ビジネスモデル |
研究実績の概要 |
ビジネスモデルの外部から見える所は、他社に模倣されやすい。例えば、コンビニエンス・ストアの仕組みは、骨格はセブン-イレブンとほぼ同じであり、宅配便のロジスティクスの基本は、米国の航空大手が採用している「ハブ・アンド・スポーク・システム」である。他にもQBハウスが流行ると、同じような千円理髪店が多数生まれてきた。こうした同質化競争の行く末は、価格競争である。製品の価格競争から脱却しようと日本企業が求めたのがビジネスモデルによる差別化であるもかかわらず、またそこで価格競争が行われしまっては、皆が疲弊する状態から脱却できない。従って、強いビジネスモデルの構築には、コスト削減の工夫と、レガシー企業、同一ビジネスモデル企業との2つの競争を踏まえた競争優位の確立が必要となる。 これらのパターンを解明するために、研究は以下の3つの段階を経て進めていくことを想定し、研究を進捗させてきた。 2019年度の研究のフェーズ1では、企業のビジネスモデルについて、これまでの研究成果及び文献・資料を整理し、「見えない部分で巧みなビジネスモデルを構築することが利益率を高める」という仮説について、検討及び精緻化を行い、分析の枠組みとするために諸々の研究を進めてきた。 これらの理論的枠組みの構築と並行し、エネルギー企業の先進事例としてコスモのスマートビークル事業の事例分析、およびスポーツクラブ業界からコナミスポーツとカーブスのフィットネスクラブ事業のビジネスモデル比較分析の結果をまとめ、共著論文として投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウィルスの蔓延により2月に予定していた海外でのヒアリング調査を次年度に延期したが、それまでの研究全体の進捗状況が当初の予定以上に進展していたため、1年間の研究としてはおおむね順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、ビジネスモデルの持続的競争優位を解明することを目的とする。様々な業界において独自のビジネスモデルにより成長を遂げている企業を抽出し、以下の2つの視点から分析を行う。第1に、コスト優位に関して、低コストを構築するための代替案を抽出する。第2に競争優位については、レガシー企業との競争、同一ビジネスモデル企業との競争を踏まえ、競争優位を維持する方法を示していく。本研究の学術的独自性と創造性としては、以下の2点が挙げられる。 1)低コストのビジネスモデルの構築についての概念を提示する点:伝統的な会計学では、コスト削減の方法が研究されてきたが、ビジネスモデルの構築にあたっては、「削減」ではなく、最初から安いコストで回る低コストのモデルを「構築」することにある。この考え方は、「原価企画」(加登 1993)と共通する考え方である。例えば低コストの構築には、①やらない、②持たない、③顧客にやってもらう、④固定費の変動費化、といった考え方が挙げられるが、このような低コスト構造の方法について、類型化することは、従来の会計学にはなかったアプローチであり、そこに学術的な意義を持つ。 2)2つの側面から競争優位に着目する点:競争優位に関しては、レガシー企業との競争と、同一ビジネスモデルとの競争の2つの側面での競争優位について解明する。特に表面から見えない部分に着目してビジネスモデルを解明する。その際に、競合企業が同質化できない戦略を追究することと、相手企業のバリューチェーンの一部に入り込んでしまう方法に着目し、持続的な競争優位を構築する視点から分析する点が独創的と言える。 2020年度の研究のフェーズ2では、分析枠組みに基づき「ビジネスモデル」のタイプについてその類型化を行う。このため成功している企業のビジネスモデル分析に加え、企業からの聞き取り調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの蔓延により、予定されていた海外出張を延期する必要があったため。
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