本研究では、ビジネスモデルの持続的競争優位を解明することを目的とした。様々な業界において独自のビジネスモデルにより成長を遂げている企業を抽出し、以下の2つの視点から分析を行った。第1に、コスト優位に関して、低コストを構築するための代替案を抽出した。第2に競争優位については、レガシー企業との競争、同一ビジネスモデル企業との競争を踏まえ、競争優位を維持する方法を示した。本研究の学術的独自性と創造性としては、以下の2点が挙げられる。 ①低コストのビジネスモデルの構築についての概念を提示した点:伝統的な会計学では、コスト削減の方法が研究されてきたが、ビジネスモデルの構築にあたっては、「削減」ではなく、最初から安いコストで回る低コストのモデルを「構築」することにある。この考え方は、「原価企画」(加登 1993)と共通する考え方である。 例えば低コストの構築には、①やらない、②持たない、③顧客にやってもらう、④固定費の変動費化、といった考え方が挙げられるが、このような低コスト構造の方法について、類型化することは、従来の会計学にはなかったアプローチであり、そこに学術的な意義を持つ。 ②2つの側面から競争優位に着目する点:競争優位に関しては、レガシー企業との競争と、同一ビジネスモデルとの競争の2つの側面での競争優位について解明した。特に表面から見えない部分に着目してビジネスモデルを解明した。その際に、競合企業が同質化できない戦略を追究することと、相手企業のバリューチェーンの一部に入り込んでしまう方法に着目し、持続的な競争優位を構築する視点から分析する点が独創的であると言える。
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