本研究は、申請段階では日本企業で働く外国人社員の適応調査を行い、そこで得られた知見と、先行研究で得られた知見により、多様化した外国人社員の自律的な成長とキャリア形成を実現する人材育成ツールCPを開発する計画であった。この目的を達成するため、中堅外国人社員の管理職業務への適応と海外大学出身の外国人社員の適応を調査し、多様な外国人社員に利用可能なCPの内省項目を開発する予定であった。ところが、コロナ禍により企業活動に甚大な影響が発生し、データ収集に着手していた外国人社員の勤務状況にも予想外の変化が発生した。具体的には、休職・離職や帰国、突然のリモートワークである。この状態ではデータとしての一貫性に問題が生じると判断し、当初計画していたデータ収集は中止して、企業に比べて早期に対面活動へと戻った国内大学の留学生と、コロナ禍でもオンライン授業が不要だった台湾の大学生を対象に、授業等でワークショップを行ってデータを収集するという方法に変更し、同時に研究期間の延長も行った。この作業を経て、2022年までに研究開始当時のプロトタイプCPを修正して完成させることができた。2023年には、この修正CP開発について国際学会での口頭発表(JSAA-ICNTJ 2023/豪州日本研究学会研究大会・国際繋生語大会)で報告をし、その後は更にCPを用いた2日間の集中ワークショップを台湾・東海大学にて開催し、留学生や海外大学生が日本での就労を視野に入れてキャリア形成のための内省を行う際のツールとして有効性があることを確認できた。今後は、このCPワークショップのノウハウや、キャリア教育としてのシラバスを確立し、教科書の作成など具体的な教育方法として社会に発信するという目標に向かって研究を継続する予定である
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