研究課題/領域番号 |
19K01822
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
徳田 昭雄 立命館大学, 経営学部, 教授 (60330015)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際標準 / エコシステム / オープンイノベーション / イノベーション / プラットフォーム |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、研究仮説として提示した「日本では産業部門を横断して適用される標準の業際化に適応した産官学協働エコシステムが形成されていないのではないか」に対する検証アプローチとして、第一に「エコシステム」の概念を深めるために、海外のエコシステム形成プロセスの事例を実証対象にした論文を纏めた。 第二に、当方が主担当者となった第26回国際ビジネス研究学会全国大会において「新価値創造に向けたオープンイノベーション:エコシステム形成と国際標準化」を統一テーマとして掲げ、同分野に精通する内外の研究者および産業界、官界との意見交換やネットワーキングに努めた。 我が国が「第 5 期科学技術基本計画」において掲げているSociety 5.0 には「ICT を最大限に活用し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく」という方針が示されている。ICT の発展と普及を背景にした技術シーズと地球環境問題や資源制約の克服といった社会ニーズが相まって、スマート化は様々な社会インフラシステムに向けられている。そして、スマート‐X のような幅広いユーザーの要請にこたえる大規模な「システム・オブ・システムズ:SoSs」 の構築には、新たなエコシステムやプラットフォームの構築に向けて既存の産業枠組みを越えた協業(オープンイノベーション)が欠かせなくなっている。しかし、グロ ーバル・プラットフォームの構築に向けた協調と競争が加速するなか、日本企業の影は薄い。このような状況の中、学会では、超スマート社会の実現に向けて日本の科学技術政策や国際標準化政策のあるべき姿が提示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エコシステムの形成に関わる研究は、エコシステムという概念そのものの曖昧さから、ア カデミアに混乱が生じている。元来エコシステムは、ある種の産業構造を表現するために生態学から導入された概念である。エコシステムが、国や産業、そして企業の競争力に大きな影響を及ぼすとの認識のもと、内外のアカデミアにおいてエコシステムの概念化がはかられてきた。しかし、エコシステムとプラットフォーム、ビジネスモデル、アライアンス、オープンイノベーションなど、諸概念が成立した背景や概念内容の異同や差異が不明確なのが現状である。CPS の標準化に関わるエコシステムの研究も「標準策定アライアンス」や「オープンCPS プラットフォーム」などの概念によって、産官学による協働のあり様が様々に表現されてしまっている。 本研究では、これまでCPS エコシステムの実証研究と並行して、エコシステムの概念内容の明確化を図り、関連する論文を2本執筆することがで活きた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究計画に提示した研究項目のうち、以下の2点に焦点を絞って研究を推進する。ただし、実証調査に当たっては、コロナ禍の渡航制限がある中、その可能性を追求しつつも、文献渉猟に特化するなどの代替案も視野に入れている。「国際標準総合戦略」の成果を定性的・定量的に検証する。特に「標準の業際化」という観点に的を絞り、その観点がそもそも抜け落ちてしまったり、それを阻んでしまったりする要因を関係者に対するインタビューを通じて明らかにする。また、国際標準申請数や幹事引き受け国数等、従来の国際競争力計測の従属変数に位置づけられていた変数を更に国際性因子と業際性因子に分類し、両因子が「国際標準総合戦略」のアクションプランの成果に与えた影響度を定量的に検証する。EU および米国の標準化政策および、業際標準策定プロセスに関わる産官学協働エコシステムの実態調査を行う。本研究ではCPS の産官学協働のエコシステムとして、EU についてはECSEL(Electronic Components and Systems for European Leadership)、米国についてはNITRD(Networking and Information Technology Research and Development)と称される官民パートナーシップによる研究プログラムを取り上げる。そして、それら活動内容を文献渉猟、ヒアリング調査に基づき分析していく。また定量的には、国際競争力に資する業際標準の生成のメカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスによる外出規制のため、年度末の出張が取りやめになってしまったため。本年度は、可能な限り執行するようつとめる。
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