研究課題/領域番号 |
19K01822
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
徳田 昭雄 立命館大学, 経営学部, 教授 (60330015)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 標準化 / 認証機関 / 非市場戦略 / オープンイノベーション / ソフトロー / SoS |
研究実績の概要 |
国家標準戦略検討会におけるディスカッション及びその準備資料の作成を中心に日本の国際標準化政策への貢献を図った。それは、すなわち2006年に策定された、いわゆる「骨太の国際標準化方針」以降の政策の評価と、今後の施策の提案である。具体的には、次のインプリケーションと内容になる。 非市場戦略を擁立するための共創(≠競争)戦略に必要な構成要素(PR、社会課題解決:規範、大義、SDGs、ルール形成:デザインサイエンス、標準化、社会的受容(ある意味の総合信頼性)、ソフトロー&アジャイルガバナンス、リーガルテック、SoS)に関する理論/ケース蓄積を増やす(市場戦略⇔非市場戦略)必要がある。ルール形成の盤面となる対象の拡大→リソース制約の日本は戦略的・選択的に対応すべきである。 規範についてもD&E&I、ELSIという観点から「アジアの声(という名の日本の狙い)」を反映させることが肝要であり(リソース:東京大学 未来ビジョンセンター、京都大学 白眉 etc.を活かすことができる)。規範を基盤にした問題解決だけでなく、SoSやSPCG管轄の分野では必ずしもEUが強いわけではない。官民連携だけでなくグループ標準を取るためのアカデミアとの連携が必要である。標準対象アイテムと非競争領域の設定に向けて産学官システムの構築が必要である。 また、EUの国際標準エコシステムの分析から、EUには、①行政による産業政策、科学技術・イノベーション政策とのかけあわせでの標準政策の推進、②事業会社をサポートする質量両面で豊富な支援機関群の存在、に特徴があることが明らかにされ、他方、日本には、欧州と法制度が異なり標準化に関する民間機関への授権度が小さい、欧州よりも規範性の研究に優れる人文系アカデミアとの連携性が弱い、支援機関の事業規模が小さい上に分散しており連携体制を組まざるを得ない等の事情が明らかにされた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際標準戦略会議の議論を中心に、以下のインプリケーションを獲得するに至っている。 国際競争にも大きな影響を及ぼす観点から、各種の国際機関(国連機関、分野毎の国際機関)で決定されるルールや、国際的な規制等と連関するルール(例)WP29(国連の下部組織である自動車基準調和世界フォーラム)、IMO(国際海事機関)【参考】「標準を戦略的に活用すること」について、ここでは国際的な市場創出、市場形成や競争優位の確保を目的とする観点に立つ。例えば、競争戦略(国の産業戦略やイノベーション戦略、企業の経営戦略やビジネス戦略等)として、国際標準化のみならず、国際標準化後に例えば諸外国の規制・制度(安全規制、調達制度等)に反映されることや、国際的な企業連携の手段とすること等が対象に含まれる。 しかるに現在、標準を社会経済活動のインフラとする観点では、標準が依って立つ社会環境は以前とは格段に異なる。デジタル化によるデータ活用型の社会(CPS、System of Systems)や、社会課題の解決(SDGs)、社会の持続可能性確保を追求する社会形成活動(DX、GX、ESGの取組等)がイノベーションを伴って急速に進展し、幅広い産業でバリューチェーン全体に影響を及ぼし、新たな領域も次々と出現するなど、社会経済活動の状況や構造が大きく変化している。このため、例えば、新たな領域として、システム同士の連接やバリューチェーンの中での連接を必要とする領域では、これらをつなぐインターフェースの役割を持つ標準が必要不可欠となる。
|
今後の研究の推進方策 |
我が国の標準戦略を整備するに当たり、ルール形成戦略の要素を含め、取組の強化が持続可能性と自律性を伴って進むためには、まず効果的なエコシステム(標準の活用を促進するエコシステム)を成立させるステイクホルダーの体制や機能の整備・強化が必要となると考えられ、本研究ではそのための施策の素材を提供する。 ステイクホルダーは、①標準を活用してビジネス活動を行う事業会社(以下「事業会社」とする)、②事業会社に対して外部から標準の活用に関するサービス提供を行って支援する企業・機関(公的機関を含む、以下「支援機関」とする)、③政府で専ら構成されると考えられる。標準を戦略的に活用する能力を向上するためには、エコシステムの基盤として、事業会社が利用可能な、標準の活用に関するサービス機能が質量両面で強化される必要があると考えられる。そのためには、政府の施策のみならず、民間経済活動としても、事業会社による利用促進と支援機関による提供促進の好循環が生じる必要があり、特に事業会社と支援機関との間でサービス取引の資金循環と規模拡大が図られ、支援機関や支援人材の参入が拡大することが望ましいと考えられるゆえ、そのようなエコシステムの形成に資する施策の低減を図る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による海外渡航調査の未実施による。 最終年は海外調査の実施及び研究成果のアウトリーチ、そして関連研究会の開催に支出する。
|