研究課題/領域番号 |
19K01823
|
研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
本間 利通 大阪経済大学, 経営学部, 准教授 (90461128)
|
研究分担者 |
若林 直樹 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (80242155)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 組織コミットメント / 職業コミットメント / 専門職 / 役割コンフリクト / コンプライアンス |
研究実績の概要 |
本年度は、組織コミットメント及び職業コミットメントが専門職としての組織行動にどのような影響を与えるのかを評価するために①コンプライアンス行動および職業コミットメント尺度に関する文献収集②薬剤師を対象としたアンケート調査(調査対象者:60名)③アンケート調査の結果に基づいた専門職の組織行動に関する検討、を行った。 文献調査として、コンプライアンス行動のモデル化を行うために必要な理論研究と職業コミットメント尺度の改良を目的とした実証研究についてレビューを行った。これに基づいて予備調査に必要な質問項目を作成した。さらに、ヒアリング調査を実施して尺度項目の改善を行った。 薬剤師を対象とした予備調査では、組織コミットメントと職業コミットメントそれぞれについて、情緒的な側面と存続的な側面を測定して、かかりつけ薬剤師と非かかりつけ薬剤師の比較を行った。かかりつけ薬剤師の方が、組織コミットメントの存続的側面と職業コミットメントの存続的側面が強い傾向にあった。情緒的側面については、組織コミットメントにおいても職業コミットメントにおいても有意な差は見られなかった。存続的コミットメントが持つ、組織にとって適応的な側面を検討するための材料を得ることができた。従来的には組織コミットメントにおいても職業コミットメントにおいても、存続的側面はパフォーマンスとは無関係、もしくは負の関係にあると想定されてきたが、本調査では組織の戦略と合致する適応的な面があることを確認できた。予備調査の結果は、ワーキングペーパーおよび研究会で成果の一部を報告した。 アンケート調査およびヒアリング調査に基づいて、かかりつけ薬剤師の職業コミットメントを確認して、コンプライアンス行動について検討を行った。組織に対する関わり方について留意することの意義を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、本調査を行うために必要な文献調査・尺度改良の検討を行うことができた。おおむね順調に進展していると評価する。 具体的には、次年度に行う予定であった予備調査を今年度に行うことができた。薬剤師を対象として、かかりつけ薬剤師と非かかりつけ薬剤師の職業コミットメントおよび組織コミットメントの比較を行った。予備調査に先行してヒアリング調査を行い、職業的コミットメント尺度を作成した。ヒアリング調査に基づいたアンケート調査を行うことで、より実態に即した職業コミットメントの質問項目を作成することができた。組織コミットメントと職業コミットメントの存続的側面をさらに精緻に測定するために、今年度に得られた結果を利用して、今後も尺度の改良を行う。尺度の精緻化については、依然として課題が残っているが改良を積み重ねるために必要なデータや知見を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた成果を活用して、次年度以降に本調査を行う。職業コミットメントの存続的側面を把握するための尺度の改良を行い、本調査を行う。存続的側面を把握するためには、質的な調査によっても得られるところが大きいため、専門職を調査対象としたヒアリングを継続的に実施する。調査対象として薬剤師に加えて看護師も対象とする。オンラインによるヒアリング調査は継続的に実施できる環境にある。本調査は、アンケート調査もオンラインで行うことを検討している。 今年度はかかりつけ薬剤師のコンプライアンス行動について調査・検討を行ったが、今後は、不正・事故防止制度に対象を広げて調査・検討を行う。特に専門職の役割外行動について文献収集に加えて、質的な調査を行う。いずれも従来のコンプライアンス行動および職業コミットメントの存続的側面をよりよく把握することに繋がる。今後は尺度の改良に加えて、今年度に得られたアンケート調査に基づいて、専門職の職業コミットメントとコンプラアンス行動の関係について分析・報告を行うことも見込む。
|