研究実績の概要 |
本研究は、薬剤師を対象として行ったアンケート調査及びヒアリング調査に基づいて、コンプライアンス行動のモデル化を検討した。職業コミットメントと組織コミットメントについて、両者を量的・質的に評価した。コンプライアンスは法令遵守以外も含める広い概念として捉えて、コミットメントが持つ影響を評価した。2019年と2020年にアンケート調査を行い、薬剤師向けの組織コミットメントを適切に評価するために、ヒアリング調査を適宜行いながら尺度の改善を検討した。コミットメントは情緒・存続・規範の3要素から構成されるとする3要素モデルに基づき、職業および組織コミットメントを測定したところ、組織コミットメントの存続的要素の信頼性について課題が残る結果となった。 薬剤師が専門職として行う「かかりつけ薬剤師」業務は「物から人へ」と表現されるように業務転換の流れの中にある。こうした状況において、薬剤師の主体的な職務への関わりを測定する有用な概念として「ジョブ・クラフティング」がある。薬剤師のジョブ・クラフティングを測定した結果は「薬剤師版ジョブ・クラフティング尺度の予備的検討」として『医療経営学会誌』15(19), 31-16.に掲載された。情緒的職業コミットメントはジョブ・クラフティングの要素のうち2要素と相関があり、存続的職業コミットメントは有意な相関を持つものはないことを示した。 かかりつけ薬剤師業務について行ったヒアリングとアンケートの結果は「薬剤師のかかりつけ制度認識の構造」として『組織学会大会論文集』10(1),124-129.に掲載された。かかりつけ薬剤師の認識について因子分析を行い、かかりつけ薬剤師の分類に貢献する知見を得た。薬剤師業務が「物から人へ」の流れにある中で、「物」に関する認識と「人」に関する認識は、それぞれが異なる因子として分けることができた。
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