| 研究課題/領域番号 |
19K01828
|
|---|
| 研究機関 | 北海道大学 |
|---|
研究代表者 |
相原 基大 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (40336144)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
| キーワード | 制度的文脈 / 産業地域 |
|---|
| 研究実績の概要 |
事業期間２年目である本年度は，当初計画の大幅な見直しが必要になった．Covid-19の流行の影響により，本年度に国内外で本格的に実施予定であった現地調査が実現できなかった．事業期間全体の計画を見直し，現地調査が可能になった折に歴史民族誌の手法で集中的な調査分析の実践で対応できるよう準備に努めた．
本年度に展開した研究活動は大きく次の３つである．第１に，前年度に収集した一次および二次資料を分析に適うデータ形式に整えるとともに，現状で入手可能な資料を渉猟し，データベースの操作性と完備性を高めた．国内の木工インテリア製造業および眼鏡枠製造業の産業地域群に関する資料に関しては，計量解析に適用するテキストデータの整備が順調に進んだ．他方，とくに北欧の木工インテリア製造業に関して，英文資料とともに現地の言語で書かれている歴史的資料を入手できた．現地協力者の支援を得ながらデータ整備を進めているが，分量の多さもあり時間を要している．第２に，研究対象である６つの産業地域のうち，相対的に良質なデータベースを整備できている国内外４事例に関する記述的研究をすすめ，ワーキングペーパーの執筆を進めた．なかでも木工インテリア製造業に従事する国内の産業地域群に関しては，蓄積していた経験的データに依拠して詳細な事例研究が大きく進展し，２本のワーキングペーパーを執筆中である．他の国外２事例に関しても並行して記述的研究を進め，理論的サンプリングの軸の改善を含め研究プロジェクト全体で得られる成果の精度の向上をはかった．第３に，記述的研究の進展に沿い，本研究全体を支える概念枠を修正した．事例研究を遂行する過程で，各産業地域で形成・変容してきた制度的文脈を当地で事業に従事する人々の視界から精確に理解する際に不可欠な業界の基底で働くルーティンを識別することができた．同成果を本研究事業における概念枠の洗練につなげた．
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記した通り，本年度は事業全期間にわたる大幅な計画の見直しが不可避になった．研究計画では事業期間３年目以降に予定していた一部の調査研究活動を前倒しして，ひとまず現時点でのデータベースにもとづく記述的研究を重点的に遂行し，短期間で大幅に焦点の絞った内容にならざるを得ない現地調査に向けた準備に傾注した．他方，本年度において，記述的研究を遂行する過程で新たに重要な理論的視角を導入して概念枠を再構築したり，未発見であった新たな資料を入手し，より確度の高い記述的研究の実現に向けた研究基盤の整備が進んだりするなど，事業を着実に進展できた面もあった．ただし，現時点で所定の事業期間内に現地調査が実現できるかが不透明なため，本事業の完遂に向けた状況の見極めが必要になるとも考えている．
|
| 今後の研究の推進方策 |
事業期間の３年目については．以下の推進方策をたてている．第１に，現在執筆を進めている２本のワーキングペーパーを含め，記述的研究の成果を確実にとりまとめる．木工インテリア製造業の国内の２つの産業地域および眼鏡枠製造業の国内外それぞれ１つずつの産業地域に関しては，制度的文脈の軸となる業界で培われてきたルーティンの作用を軸に，比較事例研究に適う分析基盤の再整備と概念枠の構築とを確実に進めたいと考えている．国外の残る２つの産業地域に関しては，まだ埋めきれていない欠損があるデータベースの更新に注力する必要があり，テキストデータの解析に適う研究の基盤を整えていく．
第２に，過年度に築いた業界関係者から協力を得て，本研究の遂行に不可欠な歴史民族誌の手法に関する実行可能性を探っていく．国内外を問わず，オンライン環境下においても，資料の提示方法などを工夫することで，一定水準の質をともなったヒアリングを実施できることは確認できている．他方，包括的な国際比較研究に適う良質なデータを最終的にどの程度入手できるかは不確実な面が強い．調査の実施方法を試行錯誤しながら，現在の条件下でどの程度の水準まで事業を遂行できるかを確認していかざるを得ないと解している．
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要に記した通り，本年度は，当初計画していた実地調査が年度内にほぼ全面的に実現できず，調査出張を次年度以降に繰り越した．そのために，企業訪問に使用する旅費，ヒアリング調査内容のデータ化等に要する費用に関して，次年度使用額が生じたものと考えられる．次年度は，調査の実現可能性を見極めながら，原データの作成作業と分析用データベースの更新作業を可能な限り最大限に推進する計画である．
|
