研究課題/領域番号 |
19K01831
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
小川 美香子 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (60456308)
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研究分担者 |
妹尾 大 東京工業大学, 工学院, 教授 (90303346)
平野 雅章 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (00165193)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 主観的ウェルビーイング / 良かったことリスト / 行動調査票 / 経験抽出法 / Subjective well-being / Heartwarming Events / Day Reconstruction 法 |
研究実績の概要 |
申請時の計画に従って、2019年度の前半は、これまで我々がウェルビーイング工学(WBE)プロジェクトで収集したデータを用いた分析と成果発表を行った。国際学会Pacific Asia Conference on Information Systems (PACIS 2019) でのポスター発表1件(7月)と、経営情報学会での発表1件(6月)である。これらの発表では、2016、2017、2018年の企業での実験、2017年のビジネススクールでの実験のデータを対象に、量的および質的分析を行い、「行動調査票(良かったことリスト)」を用いるWBEプロジェクトによる方法と、従来のWB研究のデータ収集方法との比較を行った。従来の方法とは、リッカート尺度による質問票自己診断、一日再現法(Day Reconstruction Method)、経験サンプリング法()、ウェアラブルデバイスを装着する身体活動計測法の4つである。評価は、(1)データの信頼性(短いタイムラグ)、(2)被験者負担の少なさ、(3)アフォメーション効果(宣言による現実化)、(4)収集の際に特別な器具の要否、(5)質的データと量的データを一回で収集できる、の5視点から行った。その結果WBEプロジェクトによる方法が、最も評価が高いことを報告した。 2019年度後半は、実験計画を含む研究計画を立案し、経営情報学会(10月)で発表した。立案過程で、申請時に想定していた紙ベースでの「感謝付箋」および「良かったことリスト」を用いた企業での実験を見直し、WBEプロジェクトで用いてきた「行動調査票(良かったことリスト)」をオンライン化することの影響およびそのリストを公開することによる本人あるいは他者への影響を測定することとした。そして、三大学における実験を2020年1月に実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の計画では、2019年度に企業調査を実施する予定であったが、2019年度後半に、実験計画を含む研究計画を立案する過程で、申請時に想定していた紙ベースでの「感謝付箋」および「良かったことリスト」を用いた企業での実験を見直し、WBEプロジェクトで用いてきた「行動調査票(良かったことリスト)」をすることの影響およびそのリストを公開することによる本人あるいは他者への影響を測定することとした。そして、三大学における実験を2020年1月に実施した。このことにより、当初想定していた企業における実験が2020年度以降に延期されることとなった。 また、2019年度に新たに組み込んだ三大学における実験は、幸いにもコロナウイルスの影響が出る前の2020年1月に計画通り実施することができた。しかしながら、2019年度に立案した計画では、2020年2~3月に三大学における実験結果の分析および考察を行い、2020年度前半に成果発表を行う予定であったが、新型コロナウイルスの影響で、2月以降、プロジェクト活動をほぼ休止せざるをえなかった。研究代表者、研究分担者、研究協力者それぞれが、本務組織において、新型コロナウイルスの対応を優先せざるを得ない状況であったためである。それぞれが遠隔授業への対応や在宅勤務の影響は、2020年5月~6月に一段落してきた状況である。この間、slackによる非同期のコミュニケーションは持続できたものの、オンラインで一堂に会したプロジェクト会合を開催するに至らず、全体として、進捗がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究は、6月にZoomによるプロジェクト会合を開催、三大学における実験結果の分析、考察から着手する。プロジェクト会合は、2019年度から、当日集合できない者がSkypeで参加することを実施してきた。非同期のコミュニケーションツールとしてslackも導入済みである。2020年度は、新型コロナウイルスの感染予防や感染拡大防止のため、slackとZoomを併用し、プロジェクト会合を効率的に進める。三大学における結果の分析は、2020年度秋から冬にかけて学会発表を行う。 2020年度の後期は、職場におけるWB度を測定する実験計画を立案する。2019年度に三大学における実験を計画した当時は、新型コロナウイルスを想定してはいなかったが、幸いにも「良かったことリスト」のオンライン化を実施する結果となった。実験結果の分析を踏まえる必要はあるが、今後、企業での実験を計画する際は、コロナウイルス対策という観点から、オンラインでの実施を前提に計画したい。 また、国内外の文献調査については、2019年度には3回の学会発表と並行して進めてきたが2020年度も継続する。とくに、実験計画の見直しにより延期した心理学分野のビッグファイブ性格特性に関する文献整理は、これまでに我々が「感謝付箋」を用いて測定してきた感謝行動と個人特性との関係性を整理するうえで、概念整理から行う必要があり、必須であろう。「感謝付箋」をオンラインでどう導入するか、オンライン化した「良かったことリスト」とどう組み合わせるかについて、今年度の後半で検討し、企業における実験計画を立案する。企業における実験は、想定していた企業が、新型コロナウイルスの影響で一旦白紙となった状態である。新型コロナウイルスの秋冬以降の動向にもよるが、協力企業を改めて探索し、対策を相談しながら、遅くとも2021年度の前半には実施できるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、次の3点である。(1)国際学会の海外旅費が、開催地が中国で一人当たりの旅費が削減された上に、研究分担者が参加を見送ったこと、また、参加した国内の学会開催地が都内近郊であったため、旅費が削減されたこと。(2)当初予定していた企業実験を翌年度以降に延期したことで、実験資材として計上した複写式付箋(38万円)と謝金の一部を使用しなかった。(3)新型コロナウイルスの影響で、データの分析補助・文献整理で想定していた人件費および専門家へのインタビューに伴う謝金が削減された。 83万円の使用計画としては、新型コロナウイルスの影響で延期したデータ分析・文献整理等の謝金(15万円)、実験資材の複写式付箋(38万円を2020年度に使用する。また、2020年度に成果発表として、当初より計上していたアジアでの国際学会とは別に、豪州で開催される国際学会を加え、その参加費・旅費(25万円)、その際の英文校閲費(5万円)に充当する。ただし学会がオンライン開催に切り替わった場合、円滑な遠隔会議に必要な装備として高性能のスピーカフォン(ヤマハユニファイドコミュニケーションマイクスピーカーシステム YVC-330、6万円)、インタラクティブ白板(リコー Interactive Whiteboard D3210、20万円)に充当する。
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