研究実績の概要 |
国内で集められた日本人ビジネスマン143人を対象とするアンケート調査を行った。集計・分析の結果、文化的知性(CQ. 多様な文化を理解し、適応するための知性)を左右する要因が、(1)好奇心や根気などのパーソナリティ、(2)海外経験、(3)食事や運動などの生活習慣であることを見出すことができた(Kokubun, Nemoto, and Yamakawa. 某国際誌で審査中)。このうち、パーソナリティは、4つのCQ(メタ認知的、認知的、動機的、行動的CQ)の全てと高い相関を持っていることから、CQにおける最大の決定要因であるといえる。一方、海外経験は、仕事よりも留学を目的としたもののほうがCQとの相関が高いことが示され、学生のうちに異文化体験をすることの重要さが示される結果となった。さらに、一見すると関係の無さそうな生活習慣がCQと相関したことについては、このテーマをもっと脳科学を含む健康科学的な視点で捉えるべきことを示していよう。 そこで、これらの結果について脳科学的な裏付けを得るべく、関連するデータの解析を行った。まず、日本人200人を対象としたMRI実験の結果を集計・分析し、上で取り上げた好奇心や根気が脳の灰白質量と相関することを示した(Kokubun, Yamakawa, and Hiraki, 2020)。その他、人材育成研修への参加に脳の状態やワークエンゲージメントを向上させる効果があること、日中間の文化的な違いのために日本人と中国人、或いは中国人の男女間で組織コミットメントを高める要因に違いがあることなどを、これまでに民間企業等の協力を得ながら蓄積させてきた脳・心理情報を用いた解析から示した(いずれも某国際誌で審査中)。これらの結果、(新型肺炎等の影響で予定していた現地調査を行えなかったものの)今後の日本人駐在員のパフォーマンス向上を考えるうえで有益な情報が得られた。
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