本研究は、伝統工芸の商品価値、歴史・美術的価値、そして地域文化としての価値という三つの側面から、小規模産地の存続のあり方を明らかしようとした。具体的には、産業としての維持が困難になりつつある手すき和紙と産業的側面の強い陶磁器と刃物を事例に調査した。その結果、小規模産地は手仕事にこだわり、歴史・美術的価値を重視し、地域文化と密接な関係をもちながら、オーダーメイドや美術関連の独自市場を維持、開拓しながら今日まで事業を継続してきていることがわかった。また、産地内分業構造が明確ではない小規模産地では、職人が原材料調達、生産、販売の一切を担い、後継者は生き方として職人の道を選択していることが見えてきた。
|