研究課題/領域番号 |
19K01840
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
鈴木 勝博 桜美林大学, 大学院 国際学術研究科, 教授 (40293013)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イノベーション / 中小企業 / R&D / 探索と深化 / 情報源 / 知識創造 |
研究実績の概要 |
2021年度は、(1) 知財データと業績データの結合、(2) イノベーション創出のための各種情報源の活用に関する分析の深耕、ならびに、(3) アンケート調査票の再検討、を実施した。 (1) に関しては、これまでに整備してきた対象企業の知財データ(約10万件)と業績データに関する名寄せと結合を完了した(2021年7月)。また、(2) に関しては、予備分析用のデータセット(約400社)に関する2020年度の研究をさらに深耕し、各種イノベーション(プロダクト・イノベーション2種、プロセス・イノベーション3種)に対する、社内外の情報源(8種類)の「重要度」や「地域性」の寄与をより詳細に分析した。その結果、(i) 情報源としての「サプライヤー」(二種のプロセス・イノベーションに寄与)の重要性、ならびに、(ii) プロセス・イノベーション創出に関する「地域の優位性」が新たに判明したため、その成果を国際学会(IIAI AAI 2021)で発表し、また、英文誌(IIAI Information Engineering Express) への投稿を行った。後者については現在審査中である。 (3)に関しては、Covid19の世界的な蔓延とその長期化により、想定以上にビジネス環境が変化しため、上述の (2) の知見も交えながら、いまいちど有効な調査を行うために一から検討を実施した。中小企業白書等でも指摘されているように、コロナ禍は企業のDX化への意向を高めており、イノベーションを促進させる一面も有している。また、昨年の予備分析でも示唆されているとおり、革新的なプロダクト・イノベーションのためには「社内活動」が重要であるため、社内の知識創造プロセスを分解し、アンケート調査票に落とし込んだ。現在、3社を対象にプレ調査を実施しており、そのフィードバックを踏まえた本調査を2022年度に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度報告のとおり、2021年6月にアンケート調査を実施する計画であったが、(a) 想定以上に長引いているコロナ禍の影響について、この1年程、新たに公表されはじめた研究成果を踏まえながら調査内容を再精査した方が良いと判断したこと、ならびに、(b) 「イノベーションのための情報源」に関する分析をきちんとまとめ、その成果を調査に盛り込んだ方が良いと判断したこと、という2つの理由により、調査を再延期し、2021年末に実施する方針とした。例えば、(a) に関しては、「平時のイノベーション創出力と、コロナ過のそれが必ずしも一致しないのではないか」という報告が存在し、これについてもアンケートに盛り込みたいと考えていた。また、(b) に関しては、本研究の対象企業群におけるイノベーション創出時に、「社内リソース」や「サプライヤー」の重要性が統計的に確認できていることから、その活用状況について設問を付加したいと考えていた。 しかしながら、2021年度は、申請者に大学での新たな役職(大学院長補佐)が付与されたことにより、学務が大幅に増え、研究可能な時間に大きな制約が生じた。そのため、研究計画をうまく遂行することができず、年度内の調査が実現できなかった。 幸い、2022年度はこの役職の2年目に入り、さまざまな業務処理の効率は2021年より向上できそうな見込みである。最終年度として、有意義な調査と研究成果が得られるよう、全力で活動していきたい所存である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2021年度に再延期となった (1) 「アンケート調査の実施」、(2) 「アンケート結果の分析」、(3) 「できるだけ早期の成果公表」、を行っていく予定である。(1)に関しては、7月までにプレ調査(3社)の成果を踏まえてアンケート内容をフィックスし、8月に調査を実施する計画である。 (2) に関しては、回答結果の入力コストと時間を節約するため、(紙の調査票も配布はするものの)ウェブ上にアンケートサイトを併設し、できるだけオンラインでご回答いただけるように誘導する予定である。 (3) に関しては、残金との兼ね合いもあるものの、効果的にアルバイトを活用しながら、速報的な研究成果を2022年度中に公表できるよう、尽力していきたい。なお、これを実現するためには、事前の「仮説設定」と「調査票設計」が肝要である、まずは、2022年4月~7月の活動に心血を注ぎたい所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「進捗状況」でも報告したように、2021年度は、申請者に大学での役職があらたに付与され、学務が大幅に増えたことが計画遅延の最大の要因となった。初年度ということもあり、学務の生産性があまり上がらない中、隙間の時間を領して「予備分析の深耕」と「成果の公表」ができたことは良かったが、肝心なアンケートがまだ実施できていないことは非常に心苦しい。ただ、この遅延により、コロナが常態化した2022年度にイノベーション調査を実施することができるため、逆に、有意義なデータが得られるのではないかと期待している。 2022年度は、未達の調査プロセスを粛々と遂行していく予定である。次年度使用額の直接経費(約48万円)の具体的な使途については、(a) 「その他」項目として40万円程度(① アンケートの郵送・回収費26.4万:郵送2,000社+回収200社=2,200社×120円, ② 印刷費 13.6万円)、(b) 「人件費」8万円程度(分析補助: 時給2,000円×40時間)を予定している。
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