長期パターンと短期パターンの分水嶺に関しては、4 つの後発の壁が多く、内部リソース(技術力含め)の充実度が低いほど長期パターンとなり、逆は短期パターンとなるわけだが、食品については技術力の壁が高い事例は確認できなかったことから、そもそも技術力を持たない企業は後れて市場参入はしないとの含意が、医薬品と同様に導き出された。 その一方で、食品業に顕著に見られた後発の壁は、トップ企業のブランドの壁であり、そこに消費者の味覚の壁が表裏一体となるという食品特有の傾向が確認できた。そして、オタフクソースの事例が示すように、トップブランドの壁を克服するためにも、お好み焼き市場という新たな市場を自ら開拓しつつ、販路も拡大していくことを余儀なくされたことが、停滞期後も長期のキャッチアップ期間を必要とせざるを得ない原因となったのであり、ブランドの壁にとどまることなく、そこに販路というリソースの壁が重なっていたことが、短期パターンと大きく異なる結果を招いたのであった。 次に、長期パターンにおける停滞期の有無による共通点と相違点に関してだが、まず共通点については、差別化商品であるヒット商品や起爆商品が存在すれば短期、存在しなければ長期となることは、食品と医薬品ともに共通していた。相違点については、食品におけるブルボンとオタフクソースの対照性が、もう1 つの含意を示唆している。すなわち、停滞期を脱する起爆商品がヒット商品にはすぐに直結しない事例であり、起爆商品を誕生させたとしても、それをヒット商品にまで成長させるためには、自らが市場と販路を同時に開拓していく必要があり、スーパーでの店頭実演販売、お好み焼き店の出店サポートといった地道な活動の積み重ねが必要とされ、その結果が長期のキャッチアップとなった。
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