研究課題/領域番号 |
19K01851
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
神吉 直人 追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (90467671)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プロアクティブ行動 / 当事者意識 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,従業員による進取的行動(プロアクティブ行動)と信頼、および当事者意識との関係を中心に,関連する他の概念も含めた因果モデルを構築することである。その過程において,従業員の当事者意識などについて新たな概念定義を試みると共に,定量研究のための尺度を開発することも目的としていた。 2019年度では,1本の研究ノート(所属大学紀要;a)と1回の国内学会報告(b),および学会報告に伴うプロシーディングス(c)が研究実績として挙げられる。 aでは,Jリーグクラブ・ガンバ大阪の元社長・金森喜久男氏への聞き取り調査などをもとに,市民等からの寄付金による新スタジアム建設に至った要因について,進取的行動の観点から考察した。既存研究では,新規参加者などの若手従業員による進取的行動に焦点があてられることが多かったが,本研究では,組織を代表する社長による進取的行動を対象とした。質的研究により,進取的行動の先行要因として,キャリアでの経験,態度,知識,付与された正当性などが働いている可能性を明らかにした。また,進取的行動について,簡単な既存研究のレビューも行った。 bおよびcでは,当事者意識について,聞き取り調査などに基づいて自分事・他人事・責任感といった下位概念に関する尺度を独自に作成し,インターネット調査会社のモニターをサンプルにアンケート調査を実施した。そして,探索的因子分析によってその妥当性を検討した。また,これらの製品デザインへの影響についてパス解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書では,2019年度のうちに,文献調査によって尺度を開発し,年度内後半にプレテストまで実施することを予定していた。国会図書館への出張などにより,進取的行動に関する文献(既存の論文)の収集はある程度進んでいるものの,それらを精読する時間は十分には確保することができていない。また,当事者意識,および信頼の概念についても同様に検討が進んでおらず,尺度開発には至らなかった。 時間の確保が難しかった理由は,単純に教育活動,および学内実務に多くの時間がかかったことである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はコロナ禍によるオンライン講義の準備で研究時間の確保が非常に難しいが,合間を縫って既に集めている論文に目を通し,進取的行動に関するレビュー論文をまとめていきたい。当事者意識についても,既に着手しているレビュー論文を進めていく。これらの過程で,既存の尺度を整理し,秋頃には独自の質問票調査を実施する。推進方策としては,他大学の研究協力者との研究会を計画するなど,外的な締め切りを設定することによって,自らを追い込んでいくことが考えられる。 また,現在申請時には予定になかった共同研究の計画が3件並行して進んでおり,それらでは進取的行動の既存尺度を質問票に加えている。これらにより,進取的行動にどのような概念が影響するかについては,今年度ないし来年度中には,その結果を得ることができそうである。こちらの方が,それぞれに共同研究者がいるため,個人的研究よりも切迫して進めていくことになることが予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
「やや遅れている理由」として記載したように,既存研究のレビューとそれに伴う質問票の作成が遅れ,質問票調査を実施することができなかった。その予算が約30万円ほどである。また,研究に時間を割くことができるはずであった2月・3月にコロナ禍により,国会図書館などへの出張ができなかった。 使用計画としては,いち早く質問票を作成し,インターネット調査会社に依頼してモニターを対象とした質問票調査を実施したい。30万円規模のものを1回行うよりも,20万円規模のものを,同一サンプルで2度行うなどの工夫を,調査会社と相談しながら考えていきたい。
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