研究課題/領域番号 |
19K01851
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
神吉 直人 追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (90467671)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プロアクティブ行動 / 当事者意識 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,従業員による進取的行動(プロアクティブ行動)と信頼、および当事者意識との関係を中心に,関連する他の概念も含めた因果モデルを構築することである。その過程において,従業員の当事者意識などについて新たな概念定義を試みると共に,定量研究のための尺度を開発することも目的としている。 2020年度は,COVID-19の流行に際して緊急的に発足した研究者グループ(発起人:神戸大学経済経営研究所・江夏准教授)での共同研究に注力し,その中で本研究テーマに関わる内容を含むものとして1本のワーキングペーパー(a)を著した。そして,前年度から準備していた内容による1回の国内学会報告(b)を実施した。以上2点が,本研究テーマに関わる2020年度の研究実績となる。 aでは,2020年4月にインターネット調査会社のモニタに対して実施した調査の回答データ(4,363名分)をもとに,COVID-19の流行に対して,組織や個人がどのような対応をしており,そしてそのことが,個人の就労上の心理・行動にどのような影響を及ぼしているのかについて検討した。その中で,回答者の4割強がプロアクティブな傾向にあった。また,回帰分析を行った結果,プロアクティブ・パーソナリティは感染リスク知覚や不安感などの心理には影響していないが,COVID-19の影響下における学習棄却や両利き行動に対しては正の影響を及ぼすことが明らかになった。 bでは,新製品開発において調整の役割を担った者を対象とし,彼らのエゴセントリックネットワークと当事者意識,信頼の関係に関するパス解析を行った(N=248)。当事者意識については,前年度に実施した調査の尺度を再び用いて,主体性と責任感の下位次元の構造を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請書では,2019年度のうちに,文献調査によって質問票を設計し,同年度内後半にプレテストまで実施することを予定していた。それを2019年度内に完成させることができないまま,2020年度を迎えたが,「研究実績の概要」で述べたように,2020年度はCOVID-19の流行に端を発したプロジェクトに参加し,そこでの研究に大きなエフォートを割くことになった(併せて,ご多分に漏れずオンライン講義の実施にも時間をとられた)。結果,共同研究の中で,プロアクティブ行動と信頼に関する先行研究の検討を,僅かながら進めることはできたものの,当事者意識の尺度開発は進めることができず,質問票の設計には至らなかった。 なお,COVID-19に関する上記プロジェクトの成果として1本のワーキングペーパー(a)を挙げたが,同プロジェクトには本研究の内容にかかわらないものの,いくつかの成果がある(ワーキングペーパーがa以外に2本,論文,ブックチャプター,学会報告が各1本ずつ)。また,本研究の内容にかかわる調査を実施すべく2019年度から参加している別のプロジェクトでも,COVID-19の流行に際して緊急プロジェクトが立ち上がり,そちらでも本研究の内容とは別のテーマで3本のワーキングペーパーを著している。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19に伴って参加・実施している共同研究プロジェクトで,引き続き学会報告などの成果に向けた活動が予定されているため,本研究のための時間の確保は非常に難しい。その中で,合間を縫って既に集めている論文に目を通し,進取的行動に関するレビュー論文をまとめていきたい。当事者意識の尺度開発も,鋭意進めていく。推進方策としては,研究会などの機会に対して積極的に外的な締め切りを設定することによって,自らを追い込んでいくことが考えられる。 また,現在,申請時には予定になかった共同研究の計画が3件並行して進んでおり,それらでは進取的行動の既存尺度を質問票に加えている。これらにより,進取的行動にどのような概念が影響するかについては,何らかの結果を得ることが期待できる。 さらに,上記のCOVID-19に関するプロジェクトで実施した2度の質問票調査で得られたデータをもとに,1冊の研究書を執筆している(現在校正段階)。そこでは,プロアクティブ・パーソナリティを変数に用いた分析をいくつか実施しており,それらは本研究の成果となる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「遅れている理由」として記載したように,COVID-19蔓延に伴う調査にエフォートを割いたことで質問票の作成が及ばず,調査を実施することができなかった。2019年分からのものも含めて,多くを越年することになってしまった。また,コロナ禍により聞き取り調査に関する出張を実施できないことも,予算消化が滞る原因となっている。 使用計画としては,質問票を作成し,インターネット調査会社のモニタを対象とした調査を実施したい。調査会社と相談しながら,コモンメソッドバイアスを回避するための2時点調査や,特定のサンプルを集める調査などを考えていきたい。なお,自然な研究活動の流れの中で使用できない分については,無理に費やすことなく予定の期間を終了したい。
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