研究課題/領域番号 |
19K01851
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
神吉 直人 追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (90467671)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プロアクティブ行動 / プロアクティブ・パーソナリティ / 当事者意識 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,従業員による進取的行動(プロアクティブ行動)に関する因果モデルを構築することである。2021年度は以下のような成果を得た。まず,20年度に発足した,流行初期のCOVID-19が就労者に及ぼした影響に関する研究プロジェクトの結果をまとめた著作の中の1章で,プロアクティブ・パーソナリティが短期的には両利き行動を実現すること,および一定の条件下では,両利き行動の継続が難しいことを明らかにした。 次に,前年度の学会(組織学会,研究発表大会)で報告した際のプロシーディングスを,大幅に加筆・修正し,紀要論文にまとめた。ここでは,当事者意識がプロジェクト・メンバーとのやり取りの頻度と製品成果に影響しうることをパス解析で確認した。 静岡県立大学・国保准教授らとの学会報告では,女性従業員の管理職意向(より上位職への昇進の意向)に対して,プロアクティブ・パーソナリティが正の影響を及ぼしていること,およびその関係に対して平等主義的性役割態度(女性は子どもが生まれたら家庭に入る方がよいと考える程度)の調整効果が見られることを明らかにした。 そして,内的/外的エンプロイヤビリティの高さがプロアクティブ行動に対して正の影響を及ぼすこと,および外的エンプロイヤビリティとプロアクティブ行動の関係を意思決定権限のなさが調整することを階層線形モデリングで示した。この結果は,組織調査2020(組織学会のプロジェクト)のシンポジウムで報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請書では,2019年度のうちに文献調査によって質問票を設計し,同年度内後半にプレテストまで実施することを予定していた。それを2020年度においても完成させることができないまま2021年度を迎えたが,2021年度もこれに着手することができなかった。これは,2020年度と同様に,多くの他大学の研究者との共同プロジェクトに参加することとなり,代表者単独の本研究に十分なエフォートを割くことができなかったことによる。 COVID-19の流行に伴い,Zoomなどのリモート会議システムの利用が一般的となった。非常に便利なツールであることは間違いないが,容易に,頻繁に研究会を実施することができるため,共同研究での分担が次から次へと重なってしまった。これはひとえに研究代表者のセルフ・マネジメント能力の欠如(もしくは断れない性格)によるものである。
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今後の研究の推進方策 |
とにもかくにも,代表者単独での研究時間を確保する必要がある。早め早めに,自身の研究に割く時間を,他者との予定のような形で手帳に記しておかなければならない。勤務校での担当講義に対する学生の質問や学内業務などに追われることも予想されるが,断固たる決意で時間を確保していく姿勢が求められる。 とはいえ,現在も共同研究が5件並行して進んでいる(うち1件以外は申請時に予定になかった)。昨年度も述べたが,これらでは進取的行動の既存尺度を質問票に加えており,進取的行動に関する何らかの知見を得られることが期待される。これらの共同研究と,本研究の重複部分を上手く活用していくことも必要となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
「遅れている理由」として記載したように,申請時には予定になかった複数の共同研究にエフォートを割いたことで質問票の作成が及ばず,調査を実施することができなかった。2019年分からのものも含めて,多くを越年することになってしまった。また,コロナ禍により聞き取り調査に関する出張を実施できないことも,予算消化が滞る原因となっている。 使用計画としては,なんとか時間を捻出して質問票を作成し,インターネット調査会社のモニタを対象とした調査を実施する。調査会社と相談しながら,コモンメソッドバイアスを回避するための2時点調査や,特定のサンプルを集める調査などを考えていきたい。なお,自然な研究活動の流れの中で使用できない分については,無理に費やすことなく予定の期間を終了する。
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