• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

イノベーションの事業化における企業内経営者人材の役割

研究課題

研究課題/領域番号 19K01858
研究機関一橋大学

研究代表者

島本 実  一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (20319180)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
キーワードイノベーション / 研究開発 / 技術政策 / 経営学 / 経営環境
研究実績の概要

本研究は、日本企業がさらなる成長を目指して新規事業を開発していく際に不可欠なイノベーションの創出の条件を明らかにするものである。その際には、それを行う実行主体であるアントレプレナーに注目する。なぜならば日本企業内における企業家的人材の特徴を把握し、成功事例におけるその行動を明らかにすることにより、新たなイノベーション創出の方法が見出されることが期待できるからである。
イノベーションの実現のためには、新たな発想に基づいて既存の経営資源を組み合わせることが必要になる。しかしながら、日本企業においては、バブル崩壊以後、きわめて長期にわたり、企業内における起業家的・経営者的人材の活動は低調であったと評価されている。今後の企業成長の実現のために、その理由を解明し、その対策となる条件を明らかにすることは喫緊の課題である。
本研究は、こうした問題意識の下に、このテーマに関する実証研究と理論研究を並行して行なってきた。具体的には、令和5年度は、京セラ株式会社の協力を受けて、同社における企業家的人材の育成に関してリサーチを行った。同社の太陽光発電を中心にした再生可能エネルギーの事業を対象に、それがビジネスとして立ち上がる歴史を同社の一次資料に基づいて調査し、その企業家的人材の行動を明らかにするための研究を進めた。さらに国際比較の視点を取り入れるために、韓国の研究者と共同して、日韓のIT産業における企業家的人材に関するリサーチプロジェクトも進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和5年度には、これまで進めてきた経営史の方法論におけるアントレプレナーシップの位置付けについての成果を書籍の一章として刊行した。この研究では、社会科学の歴史を学説史に遡ってたどり、経済学や社会学の方法を、Elster(1983)に基づいて、物理学、生物学と比較することで、社会学において機能主義と解釈学が並立してきた経緯を説明するものである。その上に立って、Allison(1971)を参考にして、新たな経営学の研究メソドロジーとして、複層的事例研究が提唱された。これは企業家的人材を研究する際にも、方法論的なベースとなる視点を提唱するものとなりうるものである。
これまでの日本企業を中心にした企業家人材研究に対して、国際的な比較の視点を導入するために、韓国の研究者の協力を得て、韓国企業の企業家的人材との比較研究のプロジェクトを進めている。具体的には、IT産業を対象にして、日本のヤフー、楽天、DeNA等の企業と、韓国のNaver、KakaoTalk、Samsungの経営戦略を比較しつつ、それらおける多角的な新規事業展開の際のイノベーションと、企業家的人材の特徴や行動を比較検討している。
こうした一連のイノベーション研究に関連する成果の一部は、国際学会(2つの韓国における国際学会)で報告された。

今後の研究の推進方策

令和6年度には、以下の3つのテーマに関する研究を予定している。
(1)大企業内の企業家人材の歴史研究:京セラ(稲盛ライブラリー研究課)の協力の下、同社の歴史資料を用いて、企業家的人材に関する研究を行う。同社の新規事業(再生エネルギー事業)を主な対象にして、社内において、どのような人材がイノベーションの事業化に主導的な役割を果たしたかについてを引き続き調査する。その他にも、同社がこれまで行なってきた人材育成の手法を分析することにより、アメーバ経営等における小集団における成果のフィードバックやそれによりリーダー的人材を育成する可能性についても調査を行う。
(2)日韓のIT企業における企業家的人材の比較研究:日韓のIT企業における企業家人材に関する研究を行う。韓国の研究者の協力の下で、日本と韓国のIT企業の発展の経緯を比較し、その経営戦略の相違や、組織構造の違い、企業家的人材の差異を明らかにする。
(3)経営者企業の成立史:日本企業において企業家的経営者や専門経営者がいかにして企業内でイニシアティブを握っていったのかについての歴史研究を行う。10名程度の日本の代表的な経営者を対象にして、その起業家的活動の歴史的経緯をたどることにより、そこに見られる起業家的・経営者的人材の特徴を明らかにする。成果については、書籍として刊行することを計画している。

次年度使用額が生じた理由

国際学会の予定の変更等で、そのために準備していた旅費が不要になるケースがあったため、それによって次年度使用額が生じた。
令和6年度に関しては、すでに複数の国際学会において研究発表が採択されており、それらに参加するための交通費や宿泊費として必要になる支出が確定している。
また引き続き、最新の産業に関するシンクタンク・レポートやデータベース等の購入や、経営学や経営史など関連する人文・社会科学分野の書籍や資料の購入のために使用する。データ入力の作業に労力が必要な場合には、作業を支援するためのアルバイトを雇用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] Chungbuk National University/Gacheon University/University of Seoul(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Chungbuk National University/Gacheon University/University of Seoul
  • [学会発表] Unintended Consequences of Industrial Policy: Lessons from Japanese Business History2023

    • 著者名/発表者名
      Minoru Shimamoto
    • 学会等名
      Asia Trilateral Seminar (Korea University, Peking University, Hitotsubashi University)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] The Merits and Demerits of Japan's Industrial Policy: The case studies of three industries2023

    • 著者名/発表者名
      Minoru Shimamoto
    • 学会等名
      韓国経営史学会
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 「行為の経営学」の新展開2023

    • 著者名/発表者名
      加藤俊彦、佐々木将人
    • 総ページ数
      208
    • 出版者
      白桃書房
    • ISBN
      9784561161875

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi