研究課題/領域番号 |
19K01862
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中本 龍市 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (80616136)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 経営学 / 組織論 / 資源依存理論 / 組織間関係論 / 専門職サービス組織 / 特許 / 知識 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、組織間関係における相互依存性が組織の資源蓄積と成果にどのような影響を与えるのか、ならびに、資源蓄積による資源価値変動が相互依存性への対処戦略にどのような影響をもたらすのかを明らかにすることである。 本研究の問いは、(1)組織間の取引関係における相互依存性が資源蓄積にどのような効果を持つのか、(2)新たに蓄積された資源は組織成果にどのような効果を持つのか、また、(3)新たに蓄積された資源は組織間の相互依存性をどう変動させてどのような新たな対処戦略を採用させるのか、である。 本研究の成果はこれまでほとんど用いられてこなかった新しいデータセットによる実証分析によって、組織間関係と相互依存、内部資源蓄積、対処戦略の要素間関係を明らかにできることである。とりわけ、本研究では、顧客組織(B to Cにおける個人の顧客と区別して、B to Bの取引関係における組織としての顧客という意味で用いる)が組織内部の資源蓄積に与える影響に焦点を当てる。これまで応募者は、顧客組織との関係が受注側の組織に与える影響を分析してきた。この一連の研究の流れの中で本応募課題の着想を得た。この点については、資源依存理論を体系化したPfeffer自身も、組織内部への影響が十分に実証分析されていないと指摘している(Pfeffer, 2003)。実際に、Christensen(1997)などの例外を除くと、この分野は実証研究が少なく蓄積が期待されている(Pfeffer, 2003 ; 宋・趙, 2015)。 今年度は、これに関する既存研究のレビューと基礎的な分析結果の報告を行った。この成果をもとに来年度に論文執筆と投稿を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定したいたように、本研究が蓄積するオリジナルなデータセットを収集する必要がある。これに必要なデータベースの契約ができた。すでにダウンロードを開始し、データセット構築を開始している。また、データセット構築と分析の補助ができる大学院生を確保して分業体制を整えることができた。日中の国際比較研究が可能なデータセット構築に向けて必要な体制を整えられたと考えている。 このようにデータセット構築が順調に進んだことから、年度末のとりわけ2月、3月についてはコロナウィルス感染拡大防止のため研究室での活動や、対外的な調査実施を控えざるを得なかったが、この期間の研究活動の停滞をある程度緩和できたと考えている。混合研究方法として定性的手法をどのように実施するか今後必要な検討事項である。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、2020年度前半中に、論文投稿を予定している。これは2019年度中に収集した日本のデータセットの分析による。現在までに、予定していたおおまかな分析結果を得られていることから日本語、英語で論文を執筆する予定である。 第二に、現在までの進捗状況で述べたように、日本と中国のデータセット構築の体制を整えられたことから、追加的に多国間での国際比較分析を行う準備を行う。対象としては台湾や韓国が挙げられる。本研究が用いるデータソースは、公開された特許データを元にすることから、多国間の比較ができる。この特性を活かして、異なる制度的環境下において、相互依存性が持つ資源蓄積や成果に与える効果の違い、さらに、発注側と受注側の対処戦略にどのような違いがあるのかを明らかにする。 第三に、データセットに変数を追加する。現在のところ、ネットワーク変数(取引関係における構造同値、中心性、空隙など)を十分に組み込めていないのでネットワーク変数の算出のための補助的なデータセットの構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
おもに、国際学会が国内で開催されたことや、予定していた研究補助の大学院生を確保する期間が遅れたためである。次年度に、英文校正や必要な大学院生の雇用時間を確保して用いる。
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