研究実績の概要 |
第二年度では、必要なデータセットを構築し追加的にデータを補い分析を行った。 組織間の埋め込みが組織成果に与える影響を明らかにすることができた。既存研究が明らかにしているように、専門サービスの取引では、顧客は成果物を評価しにくく、また、サービス提供者は、顧客のニーズを理解するために時間がかかる(Sharma, 1997) 。このため、埋め込みを形成する二者間の継続的・長期的取引が信頼関係を醸成し、情報交換の質や頻度を高め、行動の予測可能性を高めるため望ましいと考えられる。ただし、二者間の継続的・長期的取引にはリスクや潜在的な負の効果もある(Adler and Kwon, 2002; Uzzi, 1997)。さらに、二者関係の集合として、顧客の集合(ポートフォリオ)を考えると埋め込みが同じ効果をもたらすとは想定できない。構造的に複数の顧客関係に埋め込まれることによって、事務所は新規の情報や資源に触れることが制限される(Burt, 2004; Uzzi, 1996)。本研究では、次の仮説を検証した。 仮説(1)埋め込みは組織成果と負の関係にある、仮説(2)専門職の転職は、「埋め込みと組織成果の負の関係」を弱める、仮説(3)受任内容の分散は、「埋め込みと組織成果の負の関係」を弱める、仮説(4)技術範囲の広さは、「埋め込みと組織成果の負の関係」を弱める
分析の結果、仮説(1)、(2)、(3)が支持された。埋め込みは負の効果を持つが、それは、専門職の転職(Chondrakis and Sako, 2020)と受任内容の分散(Mawdsley and Somaya, 2020)によって緩和できることが明らかになった。これらの結果は、この分野の先行研究では、Mawdsley and Somaya(2020)を一部支持するものであるが、単なる追試研究に止まらない。
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