研究課題/領域番号 |
19K01870
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
芦沢 成光 常葉大学, 経営学部, 教授 (20184161)
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研究分担者 |
長谷川 英伸 玉川大学, 経営学部, 准教授 (20632912)
飯村 龍一 玉川大学, 経営学部, 教授 (80266246)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 戦略 / 注意エンゲージメント / 組織的注意エンゲージメント / 個人の注意エンゲージメント / 対話 / チャネル / 注意の視点 |
研究実績の概要 |
2020年度の研究では、感染症による行動自粛、さらに緊急事態宣言の発令のため、中小企業への訪問による調査が実質的にできず、十分な研究成果の達成ができずに終わっている。中小企業についての実態の定性的な研究はできなかったが、先行研究の徹底した検討を行い、感染症の終息後に予定する実態調査のための仮説の検討を中心に行った。具体的には戦略の形成プロセスにおける注意視点の切り替えを行う注意エンゲージメント論の中心的理論家であるOcasio等の研究成果の検討を行っている。その注意エンゲージメントでもトップマネジメントの注意エンゲージメントと組織レベルでの注意エンゲージメント論の検討を行った。その研究成果の要点は以下のとおりである。 経営者の個人レベルでの注意エンゲージメント論の検討から導かれた仮説は以下のとおりである。1、トップ経営者の注意エンゲージメントを規定する要因は経営者が持つ知識構造、価値観、仕事上の要請が挙げられる。2、仕事上の要請が少なく、仕事への没入度が高くなると急激な変化に対応する戦略形成の可能性が高くなる。3、トップ経営者の持つ知識構造が多くなるとアーキテクチャーの変更による戦略転換の可能性が高くなる。4、経営者の持つ価値観により、漸次的な戦略の採用か、急進的戦略の採用かが規定される。 組織的な注意エンゲージメントに関する先行研究から導かれた仮説は以下のとおりである。1、会議体への参加者がトップ経営者の価値観を受け入れるほど、注意視点の統合はより効率的に行われる。2、多角化した企業では、組織的に注意視点のボトムアップによる転換は経営者の価値観に左右される。3、会議体内での部門間、事業部間での利害対立の裁定は、トップ経営者に行われ、新たな組織や新規事業の展開に繋がる場合がある。4、企業全体での会議体の連携が行われることが企業全体での知識創造を可能にする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年春以降の感染症の蔓延により、北陸3県の中小企業への訪問調査が事実上できなかったために、定性的な実態分析ができなかった。その調査依頼さえできずに終わっている。他方では先行研究の成果の検討を行うことができた。そのため調査の前提となる仮説づくりを行うことはできた。
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今後の研究の推進方策 |
当面感染症の現在の状況が続くことが予想される。2022年3月以降にならないと実態調査は不可能と考えられる。引き続き更なる先行研究の成果を検討し、より優れた注意エンゲージメントに関する仮説の検討を進める予定である。 また北陸3県の中小企業の実態に関する基礎的データについて公開されている資料を収集する予定である。また、今後の実態調査の実施を行うため、1年ほどの研究期間の延長を検討している。研究期間を1年延長し、実態調査による基礎データの収集を行い、検討してきな仮説との比較検討を進めることを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症の蔓延により、予定していた北陸3県の中小企業調査が実質的にできず、その為に当初予定していた旅費等の支出ができなかった。また、それに付随した費用支出もできなかったためである。 今年度も夏季休暇中の北陸3県の中小企業の現地調査を予定しているが、感染症の現状からは困難が予想される。また、2022年3月にも訪問調査を予定している。しかしそれだけでは実態の把握には不十分と考えている。そのため、研究期間を1年ほど延長し集中的に北陸3県の中小企業調査の実施を予定している。 当面は先行研究に関係する文献への物品購入費を利用して、仮説の検討を充実し、より適切な仮説の創出をする予定である。
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