研究課題/領域番号 |
19K01873
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
稲垣 京輔 法政大学, 経営学部, 教授 (10327140)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日本酒 / 食のイノベーション / 価値評価研究 / 企業家活動 / フランス |
研究実績の概要 |
2019年度の研究計画においては、越境文化論、企業家研究、組織学習論、知識創造論、 国際経営論などの先行研究を整理することで多角的な分析視角を採用しつつも、さらに具体的なフィールドワークに合わせたリサーチメソッドの整理と修正をおこなった。同時に、フィールド調査も展開し、本研究が対象とする海外での日本酒産業にフォーカスして、サプライチェーンを超えた様々なアクターから競争、協働関係に関する質的データを蓄積し、その利害関係の変遷を明らかにすることが主な目的とされた。 本研究の成果に関しては、パリ第7ディドロ大学(Universite de Paris Diderot)のジュリアン・マーチン准教授と共著で「多角的な価値査定とヘテラルキーの生成ーフランス市場における日本酒の普及プロセス」を同大学のワーキングペーパーとして執筆し、若干の修正を施した上で日本情報経営学会において、2020年度に価値評価研究というテーマで特集された学会論文誌に寄稿する予定である。同論文では、ラモンによる価値評価プロセスの分析 (Lamont, 2012)を援用し, 日本酒のフランス市場の形成を事例としながら, 日本酒というカテゴリーが如何に形成され,その価値が増幅されていったかについて明らかになった. 口頭での成果は、ブラジルのリオグランデ州立大学ベント・ゴンサブレス校において開催されたCongresso Brasileiro de Negocios do Vinho において、日本酒のフランス市場での浸透における価値変化の推移について報告することとなった。また、京都大学で開催されたEGSO & OSにおいては、創造的なコラボレーションにおける事例報告をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィールド調査の範囲に関しては、以下の四つが想定されていた。1パリにおける日本人経営飲食店に対する創業の経緯と市場創造、キャリアに関するヒアリング、2パリにおける日本酒流通に関するヒアリング、3日本酒の普及を促進する認証機関と制度 に対するヒアリング、4日本食の周辺産業に対するヒアリング、という4つの分野に主にフォーカスしてインタビュー調査を計画していたが、日本酒のみにフォーカスしたために、ソムリエ、フランスを中心とした欧州域内での酒造メーカー、ワイン産業関連者、インポーター、酒愛好家のイベント開催など、ヒアリングの対象者に大きな変化が生じた。 また、研究成果については、当初の計画とは異なる学会や学会誌での発表になったものの概ね順調に進展している。中間的な成果の発表については、EGOSにおける報告を予定していたが、当該年度におけるテーマと会わずに報告の機会を獲得できなかったために、ブラジルのリオグランデ州立大学ベント・ゴンサブレス校において開催されたCongresso Brasileiro de Negocios do Vinho において、日本酒のフランス市場での浸透における価値変化の推移についてそして、京都大学で開催されたEGSO & OSにおいて、創造的なコラボレーションとしての事例報告をおこなった。報告の成果を日本語に翻訳した上で論文にまとめて、法政大学イノベーション・マネジメント研究センターのワーキングペーパーとする予定であったが、在外研究所属先のパリ大学でのペーパーとして一時的に保存され、同論文は日本情報経営学会誌からの寄稿論文として投稿することになった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、日本の酒造メーカーに対してヒアリングをおこない、日本酒のイノベーション、蔵元の経営革新、輸出に対する取り組みと取引関係の変化についてデータを収集する予定である。このようにして得られたデータセットを分析し、経営者の行動を市場セグメント毎に分類し、エコシステムがどのように形成されているかについての報告(ベンチャー学会)をおこない、さらにその研究成果を法政大学イノベーション・マネジメント研究センターのワーキングペーパーとする予定である。さらに、加筆修正の上で組織科学またはベンチャーズレビューなどに投稿する。2020, 21年度には追加的なフィールドワークの 調査結果に分析を加え、国内外の学会(国内は組織学会、欧州ではEGOSあるいはICSBなど)で報告をおこない、フルペーパーの加筆修正ののちにIndustry and Innovationなどの国際ジャーナル に投稿することを目指している。 しかしながら、2019年3月に発生したコロナウイルスの感染症の拡大によって、4月から予定されていたフィールドワークは2020年4月の時点で、全てペンディングになっている。また、すでに2020年度に開催予定だったICSBパリ学会もエントリーしているものの、開催延期が決定している。そのため、調査対象の変更や調査スケジュール、論文執筆の計画を見直し、予定を繰り下げて調査、研究をおこなうことが考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額が生じた理由は、パリにおける調査において当初計上されていた旅費を実際には申請しなかったことに基づいている。次年度において、日本の各地に点在する醸造所を訪ねてヒアリング調査をおこなう際に、計画よりもより多くの旅費を支出することが考えられるので、その際に使用する予定である。
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